「女の小箱」より 夫が見たの朝田のレビュー・感想・評価

スリリングな傑作。男と女の情念が渦巻き、関係性が逆転していく和製ノワールサスペンス。ノワールの黒さがビシビシと感じとれる照明がまず素晴らしい。特に若尾が田宮の部屋の浴室から出てくるカット。シルエットになった二人の姿が不穏さと美しさが両立させている。増村十八番のスピーディーな会話のやり取りとそれを支える役者陣の熱気に目が離せない93分。若尾が口付けたタバコを田宮が咥えるあのカット、どんな直接的なエロを描くより効果的に二人の関係性の深さを描いている。いちいち演出が洒落ていて最高。