半兵衛

100発100中の半兵衛のレビュー・感想・評価

100発100中(1965年製作の映画)
4.1
邦画では珍しいお洒落なアクション映画で、漫画チックなキャラクターや展開といい脚本を担当した岡本喜八のセンスが爆発している一作(ちなみに当初は岡本喜八が監督を担当する予定だったとか)。

マザコンのフランス人三世で陽気でドライな主人公・アンドリュー星野を宝田明が快演、キザな台詞の数々も浮くことなく見事にきまっている。謎多きヒロインの浜美枝も憎めない悪女を軽妙に演じており、そのスタイルのよさを生かして今見てもセンスのいいファッションやセクシーな水着姿を惜しげもなく披露する。

でもそれ以上に最高なのが刑事の有島一郎、どことなく頼りない風貌でたびたび敵に気絶されたりとろくな目に合っていないのだが、いざというときには宝田や浜をサポートする大活躍ぶりを見せて見てる人の胸を熱くさせる。宝田や浜との掛け合いも絶妙で、この三人のやりとりを見ているだけで微笑ましくなる。そしてラストの有島と宝田のお別れのシーンなんて笑えるのに何故か泣きそうになってしまう。

福田純監督の演出もテンポがよく、漫画チックなシーンもさらりと軽くこなしライトな作風に仕上げている。それでいて悪役が硫酸かけられたりなど残酷な死に方をする場面や、アンドリュー星野の正体について含みをもたせ緊張感をもたせたりといった演出で作品をダルさせないのも見事。特に多々良純の死に様は色んな意味で容赦が無さすぎて必見、あれは本家の007や同系列のアニメでも見たことがない(飛行機についた血肉がリアルさを増す)。

見終わったあとの爽快感といいやはり『ルパン三世』を思わずにはいられなかった、主役三人のやりとりはほとんどルパン三世、峰不二子、銭形警部のそれに近いし。漫画のルパン三世が開始されるのは1967年なので、モンキー・パンチが先にこの映画を見て何となく影響を受けた可能性はあるかも。

ちなみにマザコンで飄々とした謎多き男というキャラクターはこの2年後に作られた岡本喜八監督、都筑道夫原作の『殺人狂時代』でも登場するのが興味深い。そして共通点はあるのに宝田明はひたすら明るくてキザなのに対し、仲代達矢はぼんやりとしてマイペース、そしてどことなくサイコパスな雰囲気を醸し出しているという全く違うキャラになっているのが面白い。

それから『ビッグ・コンボ』の拷問シーンを応用したかのようなアクションシーンに思わず笑ってしまった、元ネタを知らなくてもコントっぽいので面白いと思うけど知っているとより楽しめるはず。
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