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薬指の標本のslowのレビュー・感想・評価

薬指の標本(2004年製作の映画)
5.0
眠らない港町の外れ、大鰐通りを進んだ奥まりの、産毛の茂る森の裾に佇む無機質なラボラトリーで、わたしは暑さにやられ火照った身体をひんやりとした机に突っ伏し、夢を見ていた。ジオラマは事実さながら、点在するレトロなミニチュアは、然るべき真実の為につく少女たちの嘘。音の数だけいくらでも言い換えられたはずの「あなたの手」から、静かに滑り落ちる瑞々しい果実。生傷は鮮烈な天然色と死の香りを放ち、振り子に乗って揺れる仮面は、数時間前より抽象的なわたしの顔を模して、微笑んでいた。
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