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シックス・センスの海のレビュー・感想・評価

シックス・センス(1999年製作の映画)
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不幸とは何ですかと聞かれたらどう答えますか。幸せじゃないこと、悲しいことやつらいことで頭がいっぱいになること、病気になること、死ぬこと、安心できる場所を失うこと。どうにかしたくてもどうにもできないことをふくんだ心身の状態。悲しみにも痛みにも、きっと意味があるのだと強く思うときもある。だけど確かに、誰一人幸福にはしない死を迎えてしまったひとが居ることをわたしたちは知っている。事故で我が子を亡くした母親に、いじめを苦に自殺した友達を持つ少年に、名前も知らぬ相手に殺されてしまった幽霊に、わたしが語れることは何一つない。そのひとの前では、そのひとの語る言葉を聞く以外に、わたしにできることは何一つない。わたしたちは、ひどく無力である。それがわたしたちに与えられた不幸だ。 わたしは小さな頃からホラー映画が大好きで、本格的に映画を観始めるまではホラー映画ばかり毎日のように観ていた。その中でも本作は、十代の頃にくりかえしくりかえし観て、小説も買って読んだほどで、台詞を覚えるほど何度もこのやりとりを見聞きし、次に何が起こるのかもう分かり切っているのに、毎回内容が変わる映画でも観ているかのようにわたしはこの映画の前で何度でも身構え「今度こそコールの口はふさがれる、言葉は殺される」と目をつむってしまいたいほどの不安と居づらさを覚える。たとえ表面で感じているのが優しさや温もりであっても、同時に気が遠くなるほどの暗闇が裏側から迫っているように感じてしまう。映画のせいじゃない。たぶん自分のせい。最後の秘密が明かされ、ようやく力を抜けば、肩や顎が鈍く痛み出す。 誰かに言いたくても言えないことがあるひとの、喉まで出た言葉を飲み下すときの苦しみについて、考えてみる。胸の奥の痛みについて考えてみる。想像の限界の壁はすぐに迫り来て、「くるしいでしょうすごく痛むでしょう」と、本当に苦しく痛いひとの前で零れ出そうとする言葉は中途半端でかたちにすらなっていない、くせになってるだけの意味のない優しさで、その自分の薄情さが心底憎たらしい。どうかわたし、おぼえるな、そんなことを、楽に誰かをすくった気になるなんてことを。お願いだよ。 きりがない、もう数えようのないほどひとはひとを黙らせ、黙らされ続けてきたのだと、だれかのその痛みにふれてようやく思い出す。
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