半兵衛

侠客列伝の半兵衛のレビュー・感想・評価

侠客列伝(1968年製作の映画)
3.3
東映任侠映画に大きな影響を与え、任侠映画で活躍した脚本家の笠原和夫氏がやくざ映画を作る際に参考にしていたという『仮名手本忠臣蔵』。それを思いっきりパクった作風になっているのがこの作品。

吉良上野介を思わせる悪役(河津清三郎)に策略に乗りイビられてキレてしまい、暴力を振るってしまったため殺された浅野内匠頭ポジションの菅原謙二の親分。城受け渡しならぬバクチ禁止令を出されてしまい、怒りを殺しひたすら耐える高倉健らヤクザ達、横暴をふるう悪役ヤクザ、虐められる庶民、耐えに耐えたがついにその感情が爆発した最後の殴り込み…。ここまで引用されるとかえって潔いし、忠臣蔵パターンは今まで任侠映画に引用されているので元から親和性が高いので違和感なく見ていられる。まあ逆にいうとパターン通りでいつも通りの任侠映画ということになるけど。

それでもマキノ雅弘監督ならではのきびきびした演出や濡れ場シーンの豊かさ、豪華な役者陣の軽妙な絡みは健在で安心して見ていられる。そして高倉健をはじめ役者達の安定した演技のアンサンブル。

個人的にはいつもやくざ映画のキャラと変わらない高倉健や鶴田浩二、藤純子より脇役が印象に残る。『日本侠客伝』シリーズの延長線上のような三枚目的軽妙さと悲哀さを兼ね備えた長門裕之(酒を飲んで酔いつぶれながら話を聞く演技の見事さ!)、忠臣蔵でいう不破数右衛門的ポジションにあたる若山富三郎の森繁久彌や錦之助の石松を彷彿とさせる軽妙でそそっかしい三枚目ぶり。それから珍しくよいやくざで殴り込みまで一緒に加わる関山耕司の熱演。そういった人達に比べ今一つぎこちない大木実と里見浩太朗が残念。

あと任侠映画にしては珍しく叙情的なラストにちょっと感動する。
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