滝和也

侠客列伝の滝和也のレビュー・感想・評価

侠客列伝(1968年製作の映画)
3.8
おめえさんには
恨みつらみはねぇけども
渡世の義理で
おめえさんを斬る事に
なりました…。

勝負は運府天府だ。
どっちが斬られても
恨みっこなしだぜ…。

鶴田浩二、高倉健!
運命の激突!

「侠客列伝」

高倉健、鶴田浩二、若山富三郎、藤純子、東映が贈るオールスター作品です。東映の任侠路線の基本線である我慢劇その源流である赤穂浪士をモチーフとした作品ですね。

明治40年博打禁止令発布。全国の博徒は軍部の子爵と繋がり、愛国組織としての大道会を立ち上げて大同団結しようとしていた。だが関西は三島まで繋がる組の全国制覇の為にその組織を使おうとしていた。その為に邪魔な小田原に組を構える栄生一家の木戸組長を罠にかけ、殺害。大道会の合意として一年半の謹慎を言い渡された栄生一家はシマを蹂躙され、虐げられていく…。

栄生一家若頭大倉に高倉健。台頭に大木実、そして破門されていた暴れ者重七に若山富三郎。更に里見浩太朗、桜木健一、長門裕之と東映任侠路線のレギュラーが並びます。

謀殺される組長、浅野内匠頭の役どころに菅原謙二。吉良役に河津清三郎。二人のやり取りは正に松の廊下の如し。河津さんのにくたらしさは圧倒的ですね。これは赤穂浪士以外の何者でもない(^^)

虐げられていく組。その中で途中から雲水姿で登場してくるのが若山富三郎。かつて破門された暴れん坊役で次郎長なら石松役か。兄貴分大木実との涙ながらの会話が泣かせる…富三郎の演技がハマってます。中盤見せ場が多く画面を引っ張ってますね。ラストもドス二刀流で大暴れかつ凄絶で美味しい役てした(^^)

藤純子様は芸者役で嘗て別れた想い人を待つ女で登場。弟が桜木健一で健さんの舎弟。また長門裕之にも惚れられてます。緋牡丹のお竜のまだ前らしく、可愛らしくて愛らしさのある役の方でした。緋牡丹博徒の後なら一緒に殴り込んでるかな(^^) それを期待しちゃったんですけどね(笑)これは無理筋ですわ。

鶴田浩二演じる人斬り朝次郎が藤純子様の想い人。そして今作は旅人故に冒頭書いた台詞通り、高倉健の前に立ち塞がります。この決闘シーンの台詞が全部名セリフで任侠モノファンにはお馴染みのセリフですが、たまらなく格好いい。鶴田浩二さんは健さんを凌ぐ存在感ですからね。

虐げられる我慢劇の中にこれだけ話が詰まっているにも関わらず、重厚なドラマ性の高いストーリーにスターたちを上手く配してまとめているのは流石マキノ雅弘監督です。(他に里見浩太朗のお軽寛平的な話も盛り込んでますからね。)お盆の送り火、灯篭流しが印象的にインサートされ、ドラマ性を高めてます。そして赤穂浪士さながらに当然ラストは殴り込み。こちらも大迫力でしたし、マキノ監督ならではです。

健さんは1番格好いいポジションですし、見せ場も多いのですが、途中から出てくる若山富三郎、鶴田浩二のインパクトにやや食われ気味な気はします。ただお盆の稼ぎ時に公開されるオールスター作品ならこれも仕方なしかなと。四人のスターが同時に出るのは中々ないですし…。そう考えると、これもアベンジャーズみたいなものなのかなと(笑) 東映の任侠ものはやはり良いですね。
滝和也

滝和也