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ミッドナイト・ランのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

シカゴ警察を退職しロサンゼルスで賞金稼ぎをしているジャックは、保釈金保証会社の社長エディに依頼され、マフィアの金を横領した会計士デュークの行方を追う。やがてニューヨークでデュークを捕まえるが、彼を狙うマフィアとFBI、商売敵の賞金稼ぎから追われるハメに…。

ヤサグレた孤独な賞金稼ぎと彼に捕まった心優しい会計士の逃避行の旅。
ロードムービーであり、バディムービーでもあり、アクションコメディの傑作。
何度見ても微笑ましい。

一般人を捕まえれば、報酬10万ドル。
あっさりとNYで見つけ、あとはLAに連れて行くだけ。
ミッドナイトラン(簡単な仕事)と思えたが、デュークが飛行機恐怖症で大騒ぎ。
仕方なく列車、車を乗り継ぎ長距離移動するが、道中マフィア、FBI、他の賞金稼ぎからデュークを守らなければならない。
様々な追手から逃げるドタバタ珍道中。
転がるような展開が最後まで続く。

当然、賞金首は賞金稼ぎから逃げようとする。
ジャックはデュークを守りながら、デュークを逃がしてもいけない。
駆け引きと騙し騙されのコメディが秀逸。

デュークがジャックを騙して逃げようとする時のSee you next life!の決め台詞。
危ない!と言われて、ジャックに殴られ気絶する商売敵の賞金稼ぎ。
失敬した身分証で何度もFBIに成りすますジャック。
使われた後に駆けつけ、俺が本人だ!と怒りまくる捜査官。
繰り返し使われるギャグが分かりやすくて何度見てもツボにハマる。

付け狙われる2人は道中休む暇も無く、次から次へと襲われる。
カーチェイスは当たり前、ヘリから狙撃され、FBIに囲まれ、川に落ちて激流に流され…とアクション映画の要素も充分。
だが、2人には若さも強い肉体もない。
持ち前のずる賢さで何とか逃げ切る。
いい歳したオッサンが頑張る絵面はどこか愛くるしい。

相性最悪の2人だが、実は共通点がある。
それは己の正義に従う信念。
デュークはマフィアの会計士でありながら、悪事を重ねるボスのセラノが許せず、横領した金の殆どを慈善活動に寄付して、命を狙われるハメに。
一方ジャックは、刑事時代マフィアに賄賂を貰うことを拒否。
その代償にマフィアにはめられ、刑事の職も家族も失う。
そのマフィアこそデュークを狙うセラノ。
互いにセラノに恨みを持つが、自分の行動に後悔などしない正義心が明らかにになる度、2人への好感度がどんどん上がる。

無一文になった2人は、仕方なくジャックの別れた妻の所へ金の無心に行く。
昔のように喧嘩してしまい、僅かなお金と車しか貸してくれない。
しかも妻の今の夫はマフィアの賄賂に応じた元同僚。
情け無いやら、悲しいやら…。
そこに娘が駆け寄り、貯めたお小遣いを父に渡そうとする。
父としてそのお金は決して受け取らず、痩せ我慢するジャック。
その一部始終を見て慰めるデューク…。
妻から貰った壊れかけの腕時計をいつまでも大切にしているジャックといい、コメディとアクションの合間に、ホロリとさせる人情噺も絶妙なタイミングで入る。

クライマックスは、他の賞金稼ぎにデュークは捕らわれ、マフィアに金で売り渡されそうになる。
FBIに拘束されたジャックは、預かっていた会計データとデュークを交換し、その現場でセラノを捕らえるアイデアをFBIに提案し、一同がLA空港に集結。
セラノが捕まり、生命の危機が去ったデュークを、友情から逃がすジャック。
自由の礼にと、隠し持っていた逃走資金をジャックにプレゼントするデューク。
別れのSee you next lifeが最後だけは重く寂しく感動的。
結局、大事なのは金じゃなくて心だよと、皮肉も効いている。

本作はとにかく全編にわたって爽やか。
主役2人がシンプルに金か自由を求めて、追いかけっこと騙し合いを繰り広げるだけ。
行き当たりばったりのような脚本なのだが、その割り切り方が心地良い。
演じるキャスト全員が楽しんで演じている。
ラストの「1000ドルの札束」も笑わせる。
苦労の末にジャックは念願の大金を得るが、お釣りが出せないとタクシーも拾えない。おそらくどこでも使えない。
どこまでも微笑ましい作品である。
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