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ミッドナイト・ランのYYamadaのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)
4.5
【ロードムービーのススメ】
 ~旅を通じて人生を紡ぐ~
ブロマンス映画のススメ
◆旅の目的
 賞金首の移送
◆旅の工程
 ニューヨーク→シカゴ→アマリロ→
 ラスベガス→ロサンゼルス

〈見処〉
①オールタイムベスト!
 アクション・コメディの大傑作

・『ミッドナイト・ラン』は、1988年にアメリカ公開されたアクションコメディ映画。監督は『ビバリーヒルズ・コップ』『セント・オブ・ウーマン』のマーティン・ブレスト。タイトルは「一晩で終わる簡単な仕事」=「仕事は簡単」を意味するスラングから。
・本作の冒頭はロサンゼルスから。元シカゴ警察官のジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)は、ロサンゼルスの保釈金ローン会社に、逃亡した被告人を公判までに連れ戻してくる「賞金稼ぎ」。
・一方のジョナサン・マデューカス(チャールズ・グローディン)、通称「デューク(公爵)」は堅気の会計士でありながら、シカゴの麻薬王セラノから横領し、慈善事業に寄付した変わり者。
・裁判までの5日間でマデューカスをロサンゼルスへ連れ戻す仕事を引き受けたウォルシュは、ニューヨークで捕まえたデュークを飛行場まで引き立てていく。しかし、ロサンゼルスまで5時間のフライトで済むはずが、トラブル続きでギャングとFBIに追われながら、車と列車(アムトラック)のアメリカ横断逃避行へ変わっていく…
・本作は世間に裏切られた過去を持つ賞金稼ぎと、賞金首になってしまった心優しい会計士の中年男2人が、反発しながらも心を通わせていく。誰も傷付かず、何度も見返したくなり、緩やかなこの時代に戻りたい気持ちにさせる傑作ロードムービーである。

②良作たる由縁
ロバート・デ・ニーロ自身が最も気に云っているとされる本作(真偽不明)。万人に愛される要素がたくさん詰まっている。

○: ロードムービーの良作の特徴「自己成長」「同行者との関係構築」「美しい旅情」「一定のハプニング」「移動は時間をかけて」「作中に名言あり」に対して、いずれも高いレベルで満たしている。
○: ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンのケミストリーが、二人が演じる本作の対照的なキャラクターをより魅力的にしている。
○: アメリカンな雰囲気が非常に心地好い。
とくに、本作と同じ1988年公開の『レインマン』とともに、テーマパークカジノ化される前のラスベガスのシーンでは、古きよきアメリカの雰囲気が色濃く残っている。
○: 同業者のマービン、モーズリ率いる間抜けなFBIや、失敗ばかりのマフィアの子分…愛すべき脇役キャラが充実。
○: 終始コメディ調ではなく、終盤のフィアからの逃亡シーンでは緊張感もあり、アクションとのバランスが素晴らしい。
○: FBIを気取り振り返るデニーロ、デュークによるニセ札捜査官の成り済まし、サングラスをめぐるFBIとのやり取り…何度も見たい名シーンが溢れている。
○: ジャックの娘との再開、ラストシーンの「来世で会おう」。コメディ映画ながら、感動も出来る稀有な作品である。

③トリビアもいっぱい
真偽チェックしていないですが、Wikipediaを中心に、本作が好きな方が楽しめそうな小ネタを順不同にて抜粋します。

・本作キャスティング時に、パラマウント・スタジオは、デュークの配役に女優のシェールの起用を提案したが、監督のマーティン・ブレストは「女性登用」を拒否。大物俳優ロビン・ウィリアムズの提案もあったが、ブレストはチャールズ・グローディンを採用。商業的リスクを恐れたパラマウントは離脱し、配給はユニヴァーサルに移行した。

・コミカルなやりとりに利用されたFBIモーズリーのサングラスは、ポルシェ1978年製のExclusive Sunglassesである。

・マーヴィンを演じたジョン・アシュトンは列車のシーンで、デニーロに本当に殴られている。

・ジャックとデュークが川に流されるシーンは、アメリカ西部の設定だが、水が冷たすぎたため、わざわざニュージーランドで撮影された。

・ブルース・ウィリスはデューク役のオーディションを受けたが、落選した。

・デュークが酒場で連邦捜査官になりすますシーンは、ほぼチャールズ・グローディンの即興である。

・ジャックがしきりに腕時計を気にする癖はデニーロのアイデアが採用された。

・当初の脚本では、マービンは途中で殺される予定であったが、ノックアウトされる設定に変更されたため、クライマックスシーンが緊張感のある仕上がりとなった。

・クライマックスシーンの直前、空港でマーヴィンに喫煙か禁煙かを訪ねる職員は、監督のマーティン・ブレストである。

・撮影中、手錠を掛けっぱなしだったチャールズ・グローディンは一生消えない手錠痕が残ってしまった。

・高額紙幣1000ドル札はかつて存在したが、現在では流通していない。1969年に流通停止。デュークはかなりレアな紙幣で30万ドル分も所有していたことになる。

・本作は幾度も地上波放送されている作品であるが、うち1992年2月に初回放送された、池田勝と羽佐間道夫によるテレビ朝日版は、吹替映画史上最高傑作と評されている。権利元による音源紛失のため長らく再放送の機会に恵まれなかったものの、一般公募による音源に放送時にカットされた15分のシーンをオリジナルキャストによる追加収録し、2018年7月にムービープラスで放送、同年10月には『ユニバーサル思い出の復刻版BD』にて発売されている。

・松田優作は本作鑑賞中、ジャックと娘の再会シーンで「涙が止まらなかった」と述べている。

・ジャッキー・チェンが自身が選ぶオールタイムベスト10映画の中に本作を挙げている。

・本作はレオナルド・ディカプリオが初めて観たデニーロ作品。13歳の時、父親と一緒に映画館に行き、「偉大な演技とは何かを知りたければ、このスクリーンに映る男、ロバート・デ・ニーロを見ておくんだ」と教わった。

・作品と役柄にリアリティを与えるため、
「デニーロ・アプローチ」の一環として、マーティン・ブレストとデニーロは、本物のバウンティハンターと行動を共にした。夜通しの張り込みや賞金首の取り押さえ現場にも立ち会った。

・1994年に本作を基にしたテレビ映画が3話制作された。キャストは全員交代しているがジャックなどの本作キャラクターが登場している。

・マスコーネ保釈ローンのエディを演じる
ジョー・パントリアーノは、『グーニーズ』『ハリソンフォード/目撃者』『マトリックス』『メメント』『バッドボーイズ』に印象を残す名脇役である。

・デニーロ自身が本作を「気に入っている」という根拠は、久米宏がアンカーを務めていたニュースステーションにデニーロが生出演した際のインタビューとされているが、調べてみるとそんなことは云っていない。
https://youtu.be/4m-iaS9AVMQ

・ロバート・デ・ニーロにとって、この映画のジャック・ウォルシュ役はかつて彼が演じた役とは全く異なるコミカルキャラクターという点に魅力を感じたという。「この手の荒っぽい警官くずれの男が、最後に上手くやるストーリーはとても好きなんだ。彼がラストでとる行動は、実に感動的。私にとっては最高の役だった」と述べている。(映画パンフレットより)
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