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Love Letterのandesのレビュー・感想・評価

Love Letter(1995年製作の映画)
3.3
先入観から苦手と踏んでいたので、観れる映画になっているのは驚いた。雰囲気モノと言って良いが、雰囲気は良く出ている。
まず、冒頭から映像で語ろうとしているのは良い。後から遡ると、博子が樹に囚われて、想い出が足枷になることを暗示させるシーンである。その後、鑑賞者を惑わせる展開があるが、カラクリがわかったあとも奇妙な文通により、過去が明らかになる演出も悪くない。
一方、シリアスとコメディの振り方や、樹(女)パートは案外上手くない。二人の中山美穂は共に「大切な人の死」がトラウマなのだが、樹の「熱っぽさ」に周囲が鈍感なのは微妙。家族は「父の死」がトラウマなのは理解しているはずで、にもかかわらず、風邪を拗らせる樹を文字通り放置する。母親が「おじいちゃん110番」というのもおかしいし(自分で電話するのが普通)、北海道の雪道をジジイに背負わせるのは駄目、演出も変でコケるところはコントみたいになっている(劇中はコメディパートも多いので余計に混乱する)。まぁ、「風邪」は一見元気そうな樹のトラウマのメタファーなのだろうが、それにしても無理がある描写が多い。
タイトルに反して、要は「大切な人の死」で心に穴の空いた人間の再生の物語。悪くはない映画だと思うし、自分が苦手なタイプの作品なので、辛口にはなる。ただ、エピローグは「Love Letter」にも掛かってるのだと思うが、博子にとっては残酷な現実ではないか(手紙を返送することで過去を清算したにしても)。
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