高橋早苗

幸せへのキセキの高橋早苗のレビュー・感想・評価

幸せへのキセキ(2011年製作の映画)
4.3
とかく 連れ合いに先立たれた男は
同じ女よりも弱い。
驚くほど弱い。


街には、妻との思い出だらけ
何を見ても思い出す
 季節ごとに咲く花
 一緒に歩いた道
 入った店
 彼女が好きだったペストリー
 出逢ったカフェ。。。
スーパーに並ぶ調味料すら 彼には
妻を思い出す スイッチにしかならない


それは、14歳になる息子ディランも同じ
パパであるベンジャミンが
妻の死を受け入れ切れないように

息子も ママの死を受け止めきれず
そんな自分を持て余してる
素行の悪さから 学校は退学処分

そして突然、ママの代わりをつとめるようになったパパと
事あるごとにぶつかる

おまけにパパは 何を思ったか
田舎の動物園を買いオーナーに



心機一転!と 意気込んだところで
住まいを 街から離れた田舎に変えても

パパは 息子を見るたび
妻の面影を見つけ

息子は パパを見るたび
ママを思い出す

共に 何もしてやれなかったと
力になれなかったと
自分を責めてる

目の前の家族に 何もしてやれない(と感じている)ようにね



パパの“告白”をきっかけに
二人は大ゲンカ
『自分を憐れんでいないで 何かしろ
妹とパパを助けろ』

『僕の方こそ助けてよ!』
…ディランは抑えてた気持ちを吐露するけど
それは パパを責めることになると分かってる
だからますます抑えてしまう


父は 息子に言われるまでもなく
いつでも すまないと感じてる

お互いに
目の前の家族に 何もしてやれないと
そう感じている



本当は、何もしてやれないなんてない
ただ、聞いてあげるだけでいいんだ
そのどうにもできない気持ちをね



父子は 衰弱していくベンガルトラのスパーを前にして
ようやく向き合う

父は お互いに言われたいことを言おうと提案

息子は うまくいっていないガールフレンドのことを

好きだけど 恥ずかしい
たとえ打ち明けなくても 恥ずかしい
…と打ち明ける



その時、父が言う「20秒の勇気」

『20秒だけ 恥をかく勇気を持てばいい
そうすれば 素晴らしいことが起きる』



・・・父は知ってか知らずか
身をもって体現してる
一見 突拍子もない
田舎暮らしと動物園のオーナー

そして子どもたちに語る
ママとの出会いでもね



20秒の勇気、というのは
迷いや弱さ、怖れをふっ切るためでもあるのね
カウントはしても計算はなくて

ただ、こうしたい

という本音が隠れている
もうどっち転んでもいいわ
行くわ
やるわ
するわ!という。

本音を隠した勇気で進む時
怖れなんてもんには、なすすべがない



ベンジャミンは
飼育員ケリーから

なぜ素人のあなたが動物園を買ったの?と聞かれ、答える

『いけないか? Why not?』


それは、妻との
出会いの言葉でもある

気になる方は
ラストシーンを観てね^ ^
高橋早苗

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