真鍋新一

勢揃い関八州の真鍋新一のレビュー・感想・評価

勢揃い関八州(1962年製作の映画)
2.8
いろいろすっ飛ばしていきなり大勢の捕手から追われている片岡千恵蔵の国定忠治が、結局捕まらないどころが逆に大勝利を収める景気の良い東映時代劇。

今回の忠治は年貢を上げようとする代官の居所に直接殴り込んできて殺害するという、義賊だとしても相当ヤバい奴なのだが、昔なじみの女・久保菜穂子の店にこっそりやってきて「久しぶりだったな……」と懐かしい顔を浮かべるところは千恵蔵の人懐っこい声のせいもあって、ついホロリとさせられてしまう。

近衛十四郎の平手造酒くらいならともかく、次郎長親分からの使いでやってきたという体で山城新伍の森の石松まで出てきてしまうパラレルワールド時代劇。無理のありすぎる話をオールスターの豪華さで押し切っている。忠治親分を慕って家出する北大路欣也(妹役は北沢典子)や、途中から話に合流してくる若親分の松方弘樹、別件でたまたま現場にかけつけてくる地方の親分の若山富三郎ら、顔ぶれの豪華さを楽しむ映画なんだから、途中で話が進まなくたって別に良いのだ、という潔さ。

だからこそ、近衛十四郎と片岡千恵蔵という二大剣豪の直接対決を見せ場にしておきながら、肩透かしのような演出で終わってしまったことが非常に悔やまれる。まぁまぁそれはそれとして、話が大団円ならそれで良いでしょう、という割と強引な幕引き。

たかだか90分の映画でこれだけのスターにそれぞれ見せ場を与えるのだから佐々木康監督の手腕も大したものといえるのだけど、ソツがなさすぎてそれ以上でもそれ以下でもない。北大路欣也が途中でお世話になる旅芸人一座の踊り子を演じた小林哲子が良かった。叶わぬ恋と知りながらもいじらしく夢を語る場面はベタだが泣かせる。のちの『海底軍艦』のムウ帝国皇帝閣下とはとても思えない。役に合わせて如何様にも変身できる素晴らしい女優だったのだろうと思う。

ところで、シリアスな逃亡場面に突如挿入される「おさげ姉妹」なるビクター所属の和風ガールズグループの歌謡場面もすごい。ちょっとレコードが欲しくなってしまった。
真鍋新一

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