人類ほかほか計画

月世界征服の人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

月世界征服(1950年製作の映画)
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月を目指す理由のひとつが「冷戦下の今、先に月面から地球を攻撃できるミサイル基地を作った国が世界を制する」なのがすごい。
降り立った瞬間合衆国による月の領有を宣言するのもすごい。

政府のお役所仕事じゃ進まないからって民間のトップたちが主役で、しかもお役所仕事のグダグダで遅れるのが嫌だから「予定を早めて17時間後に出発だ、許可取る必要はない、ロケット発射許可の法律がまだできてないから」っつって「でもテストとかしなくていいのか?」「初めてのことなんだからそもそもやってみないとわからん、テストも何もないだろ、一発勝負だ」みたいな感じで、「乗組員ももうこの際おれたち自身でいい」っつって、アイアンマンの人かな? みたいな自らどんどん行動する気概のおじさんたち、すごい。

後に『ジュラシックパーク』がオマージュしてるアニメ上映による説明シーン(ウッディーウッドペッカー出演。たぶんトムとジェリーがジーンケリーと共演した『錨を上げて』の影響を受けてのアイデア)で「月へ行く方法は意外と単純なんだよ」って説明された通りにめっちゃ軽いフットワークで出発する感じが夢があってアツい。

序盤のロケット建造シークエンスなどは『妖星ゴラス』等への影響も見てとれる。

あと『タンタンの冒険』シリーズの『めざすは月』『月世界探検』はこの映画から引用してる部分があまりにも多い。

宇宙空間の飛行中に修理のため船外へ出たとき、背景の星空が全く動いてなくて「止まってる」「比較対象がないからそう見えるだけだ、実際は高速で移動してる」って言うの、その後の映画ではそれだとさすがに雰囲気出ないから嘘ついて星空がぐんぐん通り過ぎていくところを、逆にちゃんと科学考証に忠実にやってるのが面白い。
宇宙空間でじわじわ離れてく人を助けるサスペンスもその後の映画でもよくあるやつだけど原点にして頂点って感じのしっかりした科学考証っぷり。
「減速してない、加速してる」「接近してるからそう見えるだけだ」とかも良い。
発射時に顔にGがかかる描写の面白さとかも原点にして頂点感(あれはどうやって撮ったのかわからなかった……)。

月面の低重力でピョーンてジャンプするシーンが、一人が一回上に飛び上がってみるだけで「やめとけ、遊んでる暇ない」とか言われて終わり。そのあと一回だけ素早く移動するためにちょっとだけ跳躍するシーンがある。ソ連映画『宇宙飛行』のあの爽快な人形アニメーションの跳躍シーン(あれは科学考証的には跳びすぎだろうけども)の、あのワクワクがないのがもったいない。というかすぐ帰りすぎ。来て領有宣言して記念写真撮って帰ってるレベル……。

月面での記念写真撮るのが二眼レフカメラ……。地球を持ち上げてる風の映え写真撮ってるのおもろい。

月は重力少ないから地球からの発射よりだいぶ簡単ですってウッドペッカーも説明してたのにそれができないくらい燃料足りないって展開に無理あるだろって感じだけど最後の名探偵コナンの殺人トリックみたいな機転による解決もおもろい。

特撮もぜんぶ超素晴らしい。
名画。
ジョージパルマジ偉大。