note

ナイトホークスのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ナイトホークス(1981年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

12月31日。NYでは冷静なダシルバと熱血漢のフォックスの刑事が女装を厭わぬおとり捜査で強盗を逮捕していた。一方ロンドンではウルフガーというテロリストが客でにぎわう商店を爆破し、犯行声明を出す。翌日、ウルフガーは新年パーティーで彼を逮捕しに来た3人の刑事と、彼を売った裏切り者を殺してNYに逃亡する。

シルベスター・スタローンとルトガー・ハウアー共演!
ストイックなNY市警察の凄腕刑事と国際的テロリストとの闘いをハードボイルドに描くアクションの隠れた秀作。

一般人を巻き込んだため、テロ組織から疎まれ孤立したウルフガーはパリへ飛び、整形してNYへ。
彼の正体・足跡をつかんだインターポールはNYで特別捜査班を結成。
軍歴をかわれたダシルバとフォックスも、嫌々ながら参加のはめに。
即席ながら対テロ捜査と心構えのレクチャーを受ける。
ウルフガーの標的は国連に集まる要人。
追う者と追われる者のドッグ・チェイスが始まる…。

スタローンが元ベトナム帰還兵で人を撃つことにトラウマを抱えた、後の「ランボー」に繋がるような人間臭いデカのダシルバを演じる。
彼の男臭い髭面と女装は見もの。
本作は筋肉ではなく、演技で勝負しているのが分かる。

ルトガー・ハウアーは「ブレード・ランナー」直前に出た作品で、「ヒッチャー」に繋がるような偏執的で冷酷非情なテロリストを強烈に演じる。

彼らの作品ではあまり触れられない印象の本作。
派手なドンパチこそないものの、足を使った追跡のアクション描写、俳優陣の存在感でなかなか魅せる。
さらに1980年代初頭の荒れていた時期の殺伐としたNYの地下鉄や廃墟の佇まい、寒々しい夜の危険なロケが緊張感を倍増させている。

前半はウルフガーも一目置く長年のライバルの特殊捜査班のボス、ハートマンのレクチャーが面白い。
この講義の内容が後に重要になるのだが、「時間の無駄だ、捜査を優先しろ」と言う現場刑事に対して、「犯人になったつもりで行動を読め!、でないと勝てない。」と貫録で嗜める。

中盤の工事中の地下鉄現場から走行中の列車へと続く走りに走るチェイス・シーンは「フレンチ・コネクション」を彷彿とさせる。
後半、イースト河のルーズヴェルト島へのロープウェイをウルフガーがジャックし、国連の要人を人質にして籠城する。
昼夜に渡る息詰まるサスペンスもなかなか。
何をしでかすか分からないサイコなテロリストの動向にハラハラドキドキだ。

ラスト、ウルフガーはテロを阻止された腹いせに、ダシルバの恋人の家に向かう。
襲われる寸前、恋人が振り返ると、なんとそれは女装したダシルバ!
ウルフガーの考えが読めるようになったダシルバが見事に出し抜き、ウルフガーを倒す。
冒頭の女装が役に立つとは(笑)、意表を突いた幕切れだ。

本作は刑事やテロリストの心情を描く作品ではなく、ドキュメンタリータッチの作品でもないが、国家や世界の危機を招くような大風呂敷を広げるテロリストが出てくるあり得ない大作とは一線を画す。
また、現場刑事の信念や拳銃を撃つ際の葛藤、プライベートにも触れ、等身大の人物描写にも好感が持てる。

今の時代に見ると、女優陣の存在感が薄いが難点か?
スタローン主演の脳筋映画だろう?と敬遠するのはもったいない。
80年代初頭にありながら、数々の刑事、追跡映画の傑作を生んだ70年代の漢気アクションの流れを汲む作品。
男なら2人の寡黙でストイックな攻防に熱くなることは間違いない。
note

note