アカバネ

ナイトホークスのアカバネのレビュー・感想・評価

ナイトホークス(1981年製作の映画)
4.5
顔だけでも超最高。

本作の肝は何といっても、S・スタローンとR・ハウアーが共演し、更には対決するという点にあるだろう。似たところで言えば『ヒート』におけるR・デ・ニーロとA・パチーノがそれにあたるだろうか。
実際、二人の対決が肝であることを証明するかのように、二人の”顔”が登場する場面ではそれぞれの顔をカットバックで交互に何度も何度も見せている。これによって二人の対決が、まるで生まれ持った宿命であるかのような感覚に観客は陥り、彼らの関係をより濃いものに感じさせる。なかでも中盤のナイトクラブで遂に二人が対峙する場面は、先程言及したような演出による緊張感の高まりや、主演の名優二人による”言葉を発さずとも通じ合っているような視線の交わり”も相まって素晴らしく興奮させられる。あの場面はあの二人以外では成り立たない。本作の白眉とも言えるだろう。

そうなれば彼ら個々人のドラマをそれぞれ描くのがこの映画の「やるべきこと」になるといえるだろう。しかし本作はそこが少しばかり足りないと私は感じた。
例えばスタローン演じるディークについて、彼は刑事でありながら元軍人という経歴をもち、その現役時代にはベトナム戦争で多くの敵兵を殺してきたというのが作中で言及されている。しかし彼は「一般市民を巻き込んでしまうかもしれない」というのを危惧しているために中々引き金を引くことができない。そんな「殺しの腕はあるが一般市民を巻き込みたくない」という葛藤が彼の中にはあるのだが、このエピソードが軍人時代とはまったく関係しておらず、その設定は本当に必要だったのかと感じてしまった(ついでに言えば、彼の相棒であるビリー・ディー・ウィリアムズ演じるフォックスの存在自体も不必要に感じた)。
折角「かつて軍人だった」という悲しげなエピソードを作りやすい設定があるのだから、ここで「かつて戦闘中に非戦闘員を誤って射殺した過去がある」みたいな簡単な過去エピソードをつけて、彼の「ウルフガーを倒す」という目的の達成と「軍人時代のトラウマ的エピソード」の克服をリンクさせた方がより味わい深いドラマが生まれたんじゃないだろうか(『ダイ・ハード』のパウエル的な感じで)。
とは言っても、本作はそこまでマジメにしかめっ面で観る映画でもないと思うので、この指摘は的外れだと言えるだろう。もし先程言ったアレコレをこの映画に盛り込んでしまっては、折角の「99分」というタイトな上映時間も伸びてしまうし、必要以上に説明的な映画になってしまう可能性もある。

「実際には描かれていないだけで、そういう裏設定があるのかもしれない」。S・スタローンやR・ハウアーの顔には、そこまで思わせるだけの味わい深さがある。俳優というのはかくあるべきだ。
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