Jaya

花ちりぬのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

花ちりぬ(1938年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

禁門の変当日、祇園のお茶屋でさる長州藩士を思う芸姑あきらやその母で女将のとみを中心にした芸姑たちのお話。当時は日付でピンと来たのだろうか?

オープニングクレジットの金魚鉢から既に美しく、加えて鑑賞後にその意味に気付かされるという構造。

女性しか登場せず、舞台もお茶屋から一歩も外に出ない。カメラが縦横に動き同じ構図がない。それをとことん活かすカメラワークの数々。演劇的な演技も映画的に引き立てるカット割りの絶妙さ。

芸姑たちの生き生きとした若々しさと、お茶屋の本質的な廃頽感と、迫る戦に仮託されたような厭世感が見事なまでに融合していて余りに美しいです。

芸姑たちのキャラクターは短いなかでも引き立っていて、周辺的人々の生き様が凝縮されているよう。その表現がいちいち素晴らしく特にお燗番の都が印象的。

この戦火を生き延びられるか分からずとも、どこまでも飄々と日常にあるさまが途轍もないリアリティを生み出すよう。

とみは帰れるのかも分からず、見える火の手に手紙を落とすあきらのラスト。倒れ伏す種八のカットがとても美しい。

撮影年を考えずにはおれない内容でもありますが、翻弄される人々の弱さと強さを戯画的な痛烈なリアリティで美しく描き出した傑作でした。
Jaya

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