YasujiOshiba

スペースバンパイアのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

スペースバンパイア(1985年製作の映画)
-
E君に借りたBDにて鑑賞。プチ〈トビー・フーパー〉祭り。オープニングで驚く。なんだこの音楽は。かっこよすぎると思ったら、ヘンリー・マンシーニの名前。いいねこういうオーケストレーション。ワクワクするわ。

魔女のホウキみたいな巨大宇宙船もよかったね。宇宙ヴァンパイアのそれだってすぐわかる。エイリアンじゃなくてコウモリなんだけど、コウモリのエイリアンでもかまわない。そのエイリアンがヴァンパイアだとしても、ヴァンパイアがエイリアンだとしても、おなじこと。

原題の「Lifeforce」は、やすっぽいイメージを避けるためらしいのだけど、むしろ安っぽいイメージにしたほうが、全然安っぽくないじゃんかという驚きがあったはず。そもそもコリン・ウィルソンの原作が『宇宙ヴァンパイア』だし。

そのウィルソンはお気に召さなかったようだ。確かにこの作品はどこか安っぽく見えるところがある。でもそこがいい。きっと、ぜんぜん安っぽくない古典になってゆくんだろうな。

なにせ特殊効果はほとんど手作りの特撮、スタジオ撮影の本物の炎と、フィルムに書き込まれたライフフォース(あるいは青く輝く血液)、ぜんぶアナログ。ぜんぶ手触り感がある。肌触りを感じる。

そしてマチルダ・メイの立ち姿の美しさ。歩く姿はまるで生きた彫刻。しかも愛だぜ、愛。ああ、こういう愛の形は、悪魔のそれかもしれないけれど、ここで再び繰り返しておこう。

悪魔こそは、人類学的な神の使いでありながら、その神に異議申し立てし、唯一神の唯一性を脅かす力について語り、むしろ人類学的神をも超越する力に仕えようとする存在なのだ、と。

フーパーって、愛にあふれる悪魔主義者なんだよな。それは決して神を裏切っているわけじゃない。むしろ愛の教えに忠実であるあまりの、愛ゆえの行為なんだよ。だから愛にあふれる悪魔主義者なんだと、ぼくは思うのですよ。
YasujiOshiba

YasujiOshiba