kane

ゲームのkaneのレビュー・感想・評価

ゲーム(1997年製作の映画)
2.0
こういうどんでん返しの映画があってもいいと思う。決して思いつかないようなオチではないが、ある意味反則なため安易に手を出しづらいのだろう。
面白いかどうかは置いといて、それをあえて試みたのが本作だ。

終始シリアスな空気感を漂わせ、張り詰めた緊迫感がないことはないが、展開がどれもこれも後出しジャンケンで、今ひとつ盛り上がりに欠けている。
その上、ゲームの目的を知る事がゲームのクリア条件でもあるため、なぜこんな状況に陥ってしまっているのか、どうすれば脱出できるのかがわからない状態で進んでいく。主人公は罠からただ逃れることしかできないので、達成感も謎が解けていく快感も味わうことはできず観ていてかなりしんどい。
しかしそれらの難点は、オチとテーマ性を考えると必然的なことでまだ目を瞑ることはできる。

受け入れ難いのはテーマ自体だ。
オチを悟られないようにラストまでテーマがほとんど隠されていて、終盤それが明らかになるが、あまりにも唐突だ。そして大団円的な雰囲気で全て上手くいったように騙されてしまいそうになるが、ゲームを通して主人公の問題が解決されているようには思えない。弟が「兄貴があまりにもバカだったから」と言う感動的なシーンも、そもそも主人公がそんなにダメな人間には見えないのだ。確かにゲーム中にも、よしといたほうがいい軽率な行動が目立つが、あそこまで追い詰める必要もないだろう。
素晴らしい人格ではないかもしれないが、主人公には主人公なりの生き方を持っているのだから、それをとやかく言う、ましてや勝手に更生させようとする権利は、たとえ親族であろうとあるはずがない。
誰かの手によってではなく主人公本人の意志で何かを選択するということがもっとも重要なことではないだろうか。

僕には、仕組まれた綿密な計画の中でシナリオ通りに動かされ、都合の良い考えを植え付けられたように見えてしまう。本人がそれで良いのなら、それでいいのかもしれないが、あれじゃあ洗脳と変わらない。
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