アニマル泉

若き日のリンカンのアニマル泉のレビュー・感想・評価

若き日のリンカン(1939年製作の映画)
4.5
フォード作品のヘンリー・フォンダ初出演作。木や柱に足を伸ばす身振りが頻出する。木の下でエイブラハム・リンカーン(ヘンリー・フォンダ)が木に足を伸ばして法律書を読み、恋人アン(ポーリーン,ムーア)と川を背景に歩きながらの移動ショット、アンと別れて川に石を投げる,その波紋、冬の凍った川が背景の雪の墓は何と夭折したアンの墓、リンカーンが将来への迷いをアンの墓に語りかけて、枝の倒れる方向で決める、この一連の流れはシンプルで奥深く美しい。1939年は「駅馬車」と本作と「モホークの太鼓」を公開した奇跡の年で、フォードはなんでも出来る自信と充実に溢れた、脂が乗り切った時期である。
独立記念日の祭りは「丸太」や「縄」が強調される。そして「火」の主題。事件が起きる。殺人場面はロングショットで見せる、フォードの至芸だ。後半は法廷劇になる。二人の息子が逮捕された母親(アリス・ブラディ)はどちらが犯人なのか頑なに証言を拒む。切ない設定だ。フォードは母親の描き方が愛情深い。リンカーンが真犯人を暴いて鮮やかに法廷を逆転するクライマックスの長回しのグループショットが素晴らしい。フォードの芝居の演出力が堪能できる。
フォードはグループショットが上手い。フォード作品では、玄関ポーチに人々が集う場面が多い。食事場面は室内だが、それ以外は玄関先のポーチが、外と室内の中間地帯としてフォード作品では実に多用される。特に訪問者を室内に入れずに気軽に話せる場所となる。ポーチには必ず椅子があり、床や階段にも座り込んで人々が話し合う場面がいろんな作品で頻出する。本作もリンカーンが長い足を伸ばしてポーチの床に座り、母親と被告の息子兄弟の妻たちと話し合うグループショットが印象的だ。
20世紀フォックス、白黒スタンダード。
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