津軽系こけし

スリ(掏摸)の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
3.6
罪人はどこへ行く。


【これは信頼できない】

ロベールブレッソン作品初鑑賞。写真作家としての印象はあったが、此度にて映画人としてのブレッソンに初対面する試みである。
本作において、登場人物は必要最低限の動きしかせず、カメラは異様に静かなスリの青年を一点に凝視するのみ。全編が青年のナレーションに沿ってゆくが、その語りには抑揚がなく、最低限の感情しか読み取ることができない。つまり、動きや、感情、台詞といったものが極力排除されていて、まるで別の”何か”を照らし出そうとしている。

【魂があるらしいが?】

1956年のフランソワトリュフォーのインタビューにて、ブレッソンは…

「物の映画と魂の映画をつくるつもりです。ですからひとは本質的に手とまなざしを見るでしょう。」

…と述べている。このスリという作品はまさに、青年の”眼差し”とその”手”から織りなされるスリの所作に焦点が絞られている。そこには青年のモラトリアムな思索があり、掻い摘んで言えばそれは救済を求める”魂”そのものを映している。
ただ、私はこの作品と対面している時、心底居心地が悪かった。それは、この作品があえていろんなものを排除していることに対する私の気づきが致命的に遅かったのと、その未熟な見地ゆえに青年の動向を感情で紐解こうとしていたためである。

【懺悔的まとめ】

やはりこういう特異な作品は定期的に見て、自己を不安な状態に陥れなければならないと思った時分。
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