佐藤克巳

はたらく一家の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

はたらく一家(1939年製作の映画)
5.0
原作徳永直作の庶民階層の働けど働けど楽にならずの一家の子供の進路問題を真正面から提起した成瀬巳喜男監督のヒューマンドラマの傑作。画面の暗さは、裸電球時代のリアル感でプロレタリア文学の雰囲気がたっぷり出ていた。父徳川夢声、長男生方明、次男伊東薫3人の収入で、母本間敦子と祖父母、赤ん坊も合わせて11人家族の生計を支える。長男が夜間学校にも進める弁護士事務所雇いで5年間の猶予をくれと父に懇願。次男は海軍軍人、三男は弁護士を目指して中学進学を仄めかす。先生大日向傳を交えて家族会議が行われて、長男が飛び出せば二人も続く懸念を抱く父も許すが結論は出ない。しかし、二階で子供等は溌剌でんぐり返し。一切の無駄を省き、風俗描写の巧みさは成瀬ならではで見事過ぎる。
佐藤克巳

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