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影なき淫獣のhorahukiのレビュー・感想・評価

影なき淫獣(1973年製作の映画)
3.7
実際に起きた猟奇事件に着想を得たセルジオマルチーノ×エルネストガスタルディによるジャーロ。過去には『エロスの恐慌・影なき絞殺魔・女子学生戦慄の体験』なんてタイトルで放映されたこともあるくらいにはエロ&変態要素強め。ちなみに英題は『Torso』。頭や手足のない裸身の彫像って意味らしく、まさしくそんなことをやるシーンもありました😱

イタリアのクソオシャレな街並み&学校というフォトジェニックな場所で女子学生が次々に殺される事件が発生。その手がかりとして警察が発表したのは凶器として使われた赤と黒のスカーフ。「そういえば誰かが身につけているのを見た気がする…」と記憶の奥を探ろうとするダニエラたちに、目撃者を消そうと犯人の魔の手が迫る。

マリオバーヴァ『モデル連続殺人』の影響を受けたのであろう顔面白マスクの殺人鬼による常軌を逸した猟奇的な殺人の連続はジャーロの醍醐味。両眼を押し潰したり、おっぱいグサっとやったり。そして必ずと言っていいほどに死体を欠損させる病的なルーティン。この犯人のアブノーマルで精神病理的な闇に対して分析的にメスを入れるのもまたジャーロの魅力。基本的にジャーロの犯人はみんな異常なほどの変態だもんね😂

冒頭の講義でたくさんいる生徒たちの中からピックアップするかのようにカメラで拾い上げた者たちに物語が絞られ、彼女ら彼らが被害者としてターゲッティングされる。その後も物陰や窓格子の隙間から覗き見る主観カメラが多用され、窃視症的な病的さも滲み出る。ヤッてるとこもガッツリ見てたし🤣

そしてビジュアルもそうなんだけど、空間が歪んでるとしか思えないようなワープ移動も駆使するスーパーパワー持ちなところも『ハロウィン』のマイケル、『13日の金曜日』のジェイソンに受け継がれている。

そしてなんと言っても本作の見せ場は後半。舞台を街中から山奥の別荘に移し、犯人が死体を解体してる中をバレないように脱出しようと試みるヒロインのスリル。めちゃくちゃハラハラするんだけど、中でも鍵のサスペンス演出が凄い。マルチーノ監督のうまさを存分に味わえるし、あそこでそのまま行かずに鍵を落とすという行為に犯人の病的な闇が集約されてる。実在を確信させてからの「不在の怖さ」に信頼を置いているのもうまさの証拠。そして『血みどろの入江』的なクライマックスも素晴らしい。あと曲もカッコいい!

イタリアのオシャレな街並みとクライマックスのためだけでも見る価値ありなナイスなジャーロでした👍
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