♪ もしあの時が古いレンガの街並に
染まることができていたら
君を離さなかった
『帝都物語』の続編…という立ち位置の作品。
ですが、前作よりも敷居が低い仕上がりでした。特に序盤の“太平洋戦争という苛烈な時代背景”を感じさせる演出は見事な限り。焼夷弾が降ってくる場面には鳥肌が立ちました。
何よりも色使いが素晴らしいのです。
特に印象的だったのは、焼けた自宅を前にした場面。青紫の空と夕焼けの色が彼女の顔に映る様は…まさに幻想的。あれを観るだけでも本作に触れる価値はあると思いました。
あと、命は容易く散るという容赦の無さも圧巻。どんな状況においても油断したら足元を掬われる…そんな教訓を体現した“あの場面”は幼い頃に観ていたらトラウマ必至だったと思います。言い残す暇なんて無いのが現実ですよね。
そして、心の準備がない状況でグロテスク。
ビチビチと鮮やかな姿を引き立てるテラテラとした輝き。クローネンバーグ監督を彷彿させる“パックリ”。一生忘れることはないでしょう。
だから、本作の功労者は美術さんや衣装さん。
白衣の汚れ方にしても“生々しさ”がありましたからね。あのリアリティを令和の世でも再現できるのか、と問われても頷くことが出来ません。やはり、細部に神は宿るのです。
ただ、そう思うと残念なのが脚本。
説明不足の部分が多く、南果歩さん演じる辰宮幸子の背景を知るには前作鑑賞が必須。主役を演じた加藤雅也さんの苦悩も万全に描けているとは思えません。
最も微妙なのが“魔人”加藤保憲。
ビジュアル的な印象は強いのですが、いまいち“強く”感じないんですよね。電柱の上に立っている場面が最も印象的…って出落ち感満載。クライマックスの呆気なさは…。
まあ、そんなわけで。
陰陽道に興味がない僕には鬼門の作品。
ゆえに何を書こうとも説得力が生まれるはずもなく(説得力皆無は通常運転)「フッ。奴は負けたのだ」とニヒルに笑い飛ばされるような感想しか書けないのです。むーん。