ひこくろ

帝都大戦のひこくろのレビュー・感想・評価

帝都大戦(1989年製作の映画)
4.0
意外と言ったらとても失礼だけど、これは面白かった。

壮大すぎる話をあまりにざっくりとまとめすぎて、結果、嶋田久作演じる加藤の印象だけが強く残ってしまった前作に対し、原作から離れて、話や登場人物をきっちりと絞ることで、こちらは物語としてちゃんとまとまっている。
かつ、戦時中という舞台設定が「帝都物語」という世界観によく合っている。

何が起こるかわからない不穏な空気に満ちた戦時下では、オカルトな描写も全然浮いて見えない。
製作側もそこは強く意識していたのだろう。オカルトを描くというよりも、むしろ戦時下を丁寧に描くことに力が注がれていると感じた。
冒頭の空襲シーンから一貫して、突然に日常が壊され、人が死んでいく戦争の様子がこれでもかと描かれる。
その様子はあまりにリアルで、恐ろしくなるほどだ。
これが下敷きにあるからこそ、魔人加藤の存在や、霊力対決、呪詛などもあり得るように見えてくる。

なかでも加藤の存在感は圧倒的で、正直言って前作よりもはるかに怖い。
これがまた物語の面白さに上手くつながっているとも思った。

そのほかの点では、前作でやらかしてしまった部分を、ひとつひとつ直した印象を強く受ける。

たとえば、できるかぎり説明的な台詞を少なくし、描写や演技で見せるのもそうだ。
クライマックスシーン以外ではなるべく霊力(超能力)の直接的な描写をしないというのもそう。
戦闘シーンをすべて暗く撮っているのも、ここぞという怖いポイントに子どもを持ってきたり、肝心の光凰役に説得力のある丹波哲郎を起用しているのもそうだろう。
続編映画で、ここまで前作を改善してみせたというのも珍しい。
しかも、その改善は確実に映画を面白くするのに作用している。
残念なのは、こちらのほうはまったくヒットせず、失敗作になってしまった点だけだ。

特撮も含め、いま観ても80年代っぽい古さをほとんど感じないし、話としても面白い。
僕のように前作でやめてしまった人や、前作を観たことのない人にも観てほしい映画だと思った
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