近本光司

魔人ドラキュラの近本光司のレビュー・感想・評価

魔人ドラキュラ(1931年製作の映画)
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フィリップ・グラスが1998年に作曲した伴奏の生演奏付き上映。てっきりサイレント映画なのかと思っていたら、フィルムの音声にピアノの演奏が重ねられていて驚いた。そういうこともできるのか。
 絶妙に出自を判別できないベラ・ルゴシの喋る英語のアクセント。史上はじめての「ドラキュラ」映画化作品といい、グラスの音楽といい、至るところから立ち上がってくる十九世紀末の仄暗さ。この日の地下鉄は仮装してどこかへ向かう若者たちで溢れかえっていて、この映画を見たばかりのせいか、いまだに夢うつつだったせいか、どうにもディストピアな空想が頭から離れなかった。