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実相寺昭雄監督作品 ウルトラマンのKUBOのレビュー・感想・評価

3.5
『シン・ウルトラマン』を見た勢いで、ちょうどCSでやってた『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』を鑑賞。

これ、『シン・ウルトラマン』で好きになった若い人が見たら「何だ、これ?」って思うだろうな。

1979年の作品と言うことだが、当時劇場でこれを見ちゃった私も「何だ、これ⁉︎」って、半ば呆れて怒ってたし(笑)。

まず、タイトルにある「実相寺昭雄」監督であるが、彼の撮ったエピソードはマニアの間では評判が高いが、『ウルトラマン』としては変化球的なエピソードばかりで王道ではない。

子供が土管に書いたラクガキが実体化するガバドン(第15話「恐怖の宇宙線」)、

宇宙で見捨てられた宇宙飛行士が復讐するために地球に帰ってくるジャミラ(第23話「故郷は地球」)、

今までウルトラマンに倒された怪獣たちの墓場「怪獣墓場」からやってきたシーボーズ(第35話「怪獣墓場」)など、

実相寺昭雄の監督した作品群はユーモアや社会批判など、王道のエピソードにはないおもしろい視点から撮られたものが多い。

本作は、そういった「実相寺昭雄」の監督作品を集めた作品だけに、「バルタン星人やゴモラは知ってるよ」といった人向けの上級者向けで、『ウルトラマン』初心者には単なる変な作品に思えてしまうかもしれない。

かくいう私も、公開当時は、久しぶりの『ウルトラマン』の劇場版だと思って見に行ったらふざけたエピソードばかりを集めただけの焼き直しで、エピソードの間を繋ぐのが特撮じゃなくてただの絵だし(新作と銘打ってこれには呆れた)、変なところでダサいナレーションや歌がかかるし、余計ダサくなった!と怒って帰ったものだ。

当時はまだ子供で、この実相寺の作品群を評価できるまで成長していなかったとも言えるけど、本作の作りが大人のウルトラファン向けとも言えず、この時期にこの中途半端なオムニバス映画を新作として世に問うた円谷プロの真意はわからない。

ただ、当時はウルトラマンの版権をタイの会社と争っていたり、円谷プロは迷走していた時期だけに、いろいろあったのかな?

ひとつひとつのエピソードには素晴らしいものがあるけれど、一本の映画として見たら、追加シーンは紙芝居だし、編集もいい加減だし、新しくしようとして変えた音楽やナレーションもダサいし、ロクなもんじゃない。

ただし、放っておいたら知る人ぞ知るエピソードだった実相寺昭雄作品を一本にまとめて映画にした、その功績は大きい。
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