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レンブラントの夜警のlorcaのレビュー・感想・評価

レンブラントの夜警(2007年製作の映画)
3.5
レンブラントの名画に潜む謎の解明がこの作品の外形を成すのだが、ディテールまでよくわからなかったのが本音。人間関係も状況も入り組んでいるし、セリフ回しは相変わらず奔放だし。ただ、レンブラントの「光と影」のマジックをグリーナウェイがいかに尊敬しているかはよくわかった。

少し妙だと思ったのは、マーティン・フリーマン扮するレンブラントが、実際に絵を「描く」シーンがほとんどないことだ。「描く」という行為のエロス、という切り口はいかにもグリーナウェイらしいはずなのに。過去に『枕草子』で近いことをやっていたはずだが。

今回はレンブラントがジャーナリスト(探偵?)みたいな行動をとるのが興味深い。芸術家の独立性、自立心のようなものにフォーカスしていて、芸術は王侯貴族の慰みものではなく創作者の自己主張なのだ、という近代芸術のあり方を浮かび上がらせる。

本作で設定されている17世紀半ばのオランダは、イギリスに先んじて共和政を確立していた。市民社会の誕生とそれに伴う自由主義的な気風を好ましいものとするグリーナウェイの考えが、この映画を土台から支えている。

その後オランダはイギリスに覇権国家の座を奪われるわけだが、映画の最後にレンブラントを評した「オランダには勿体ない演劇的な才能」というセリフも、当時の英蘭の関係性を詳しく知っていると、その機微がさらに楽しめるんだろう。
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