きゃんちょめ

マーダー・ライド・ショーのきゃんちょめのレビュー・感想・評価

マーダー・ライド・ショー(2003年製作の映画)
1.0
一般に、ホラー映画って本当に心があたたまりますよね。(とはいえ、この映画はクソです。一部演出はかっこいいですが、基本的に悪趣味で気持ち悪いです。ただし、悪趣味で気持ち悪いものはなかなか無いので、その意味では良い映画です。)

僕は、『マーダーライドショー2』というホラー映画(YouTubeで200円くらいで観れます)が人生ベスト映画のひとつなのですが、ホラー映画は、本当に良い映画が多いと思います。

映画を見るのが嫌いな人が嫌いなジャンルはしばしばホラー映画であり、映画のことが大好きな人が大好きなジャンルはしばしばホラー映画だと思います。統計を取ったわけではないので憶測ですが、これはなぜなのでしょうか。

ホラー映画を楽しく、優しく、ときには目に涙を溜めて観れる人は、本当に映画が好きなんだろうなといつも思います。

ただ、この映画に関しては、心は温まりません。次作への準備くらいに思っておけばいいと思います。暴力によって快楽を得たりする最低の人間たちがこの映画の中には、描かれています。

別にホラー映画としても、全然よくありません。はっきり言って、つまらないです。人間というのは、本当にここまで愚かになれるのかと辟易しながら時間を過ごすことになるでしょう。別に怖くもないです。

それでも、この次の作品を観たとき、
私は、なおも感動してしまいます。

本当に何をやっても全然ダメな人間たちが、信念と尊厳だけは、捨てないのです。

『マーダーライドショー2』は、ホラー映画でありつつも、人間についての深い深い考察だとさえ思えるのです。全然怖くありません。善悪二元論なんか軽々と超越してみせます。

普通の社会常識でいうところの、いわゆる悪い奴がこらしめられて、偉い奴が褒められるような映画って、なにか面白いのでしょうか。(かといって、悪いやつが褒められるような映画はクソ中のクソだと思います。)

私は、すべての社会常識を取っ払った善悪二元論の彼岸において、人間の本質がささやかに示唆されて、すぐにそのまま映画が終わると共にそこで示された本質規定が立ち消えるような映画が大好きなのです。

映画を観る前と観た後で、現実理解の何かが変わっているのだが、その変化は、善悪の価値観がひっくり返されたというような変化ではまったくないということが大事だと思います。

『マーダーライドショー2』はまさにそういう映画なのです。善悪の彼岸に連れていかれ、そこで悪人が裁かれる映画なのです。しかしそれと同時に、裁くわれわれ人間たちの限界をも策定してみせます。

悪人を懲らしめつつ、その裁きの鉄槌を裁く映画なのです。その意味で、『マーダーライドショー2』は、勧善懲悪の映画なのです。ただし、普通の意味での勧善懲悪ではまったくありません。

『マーダーライドショー2』という最高の映画を観るためだけに『マーダーライドショー1』という最低の映画を観る価値はギリギリあります。

善悪をひっくり返したら面白いと思っている映画が最近増えてきて、本当にウンザリです。

中学生のガキじゃないんだから、本当は悪人のほうが正義なんだみたいな話は、あまりにもくだらないと思いませんか。

悪人は悪く、善人は良いと思います。
きゃんちょめ

きゃんちょめ