ピエール・エテックス版『トラフィック』といったところだろうか。
とはいえ、ジャック・タチの『トラフィック』との共通点は、作品のテーマが交通渋滞という点くらいではある気がする。
タチが車や車の並びなどといった構図や画としての美しさに焦点を当てていた一方で、エテックスは個々の人物の動きや感情などに注目しているようだ。
結婚記念日にもかかわらず、渋滞のせいでなかなか帰れないエテックス演じる主人公。さらに自らの行動が周りの人たちを巻き込んでいくので、カオスがカオスを呼ぶ。
タチと異なり、渋滞という事態の全体像を掴むというより、渋滞に巻き込まれた人たちを観察する視点が貫かれる。
渋滞に怒ることもなく諦めている人たちが、ひとりひとり描かれる。
車の中でお茶したり仕事の書類に目を通したりタイプライターで文字を打ったり、しまいには車の外に出て車体を磨き出す始末。
そういった細かい行動が連鎖となり、人々の感情をかき乱していく。(大抵皆イライラしてくるのだが笑)
車の並ぶ美しさよりも、渋滞に巻き込まれた人々は何をしているのか、何を思っているのかということが、エテックスの関心事なのだ。