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バージンブルースの&yのレビュー・感想・評価

バージンブルース(1974年製作の映画)
3.6
【2014/6/23:神保町シアター】
話自体はどうってことないので、万引きくらいでそんなに?とかええーこれでヤられないのおかしいでしょ!とか考えずに、時代の空気感とオトナ前夜の秋吉久美子を楽しむのが良し、な作品。
万引き犯として追われる、まだ何者でもない予備校生の秋吉久美子と、借金取りから追われる、もう何者でもない脱サラ中年の長門裕之。
現実からの逃避行をともにすることになったふたりは、全然違うようでいて、実は似た者同士なのかも。
長門裕之はとにかく無様で惨めな中年男なんだけど、虚勢を張ったりプライドちらつかせたりするのがまた虚しく。処女の秋吉久美子をナントカしたいという下心でくっついてきてるのに、いつの間にか「オレは(秋吉の)バージンを守る義務があるんだ!」などと言い出す始末。生きる目的が欲しかったんでしょうな。笑っちゃうけど。
一方秋吉久美子は、よくありがちな飄々としたヒロインとも違って、友達思いで優しくて、長門のこともなんとなく気になってるようだし。この曖昧な態度と口元が超エロかったです。ケーキ攻撃はドリフかよ!と突っ込みましたが。
アングラ劇団、街の風景、街ゆく普通の人の反応(これはかなり笑える)など、かなり生々しい80年代レリーフ。野坂昭如の歌が耳につく。
ラストはアルベール・ラモリスの「白い馬」みたいなのだけど、希望と取るか絶望と取るか。わたしはどちらでもない、「無」だなと思った。
あと、このころの長門裕之って、桑田佳祐と往年のイケてないジュリーに似てるのね。
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