【20世紀の締めくくりに相応しいfarce=笑劇】
スコセッシ作品の中でも特に評判の悪い本作だが、この映画を観る限りはっきり言ってブニュエルとかヘルツォークに近い不条理テイストが濃厚。万人ウケをひたすら拒んでる辺りが凄い。
要するに汚辱の街ニューヨークを浄化する為の使徒(エヴァではない)がニコラス・ケイジの演じる救命士。彼の魂は無垢であり、悪に満ちたこの世界から解脱する為の儀式=人命救助を絶えず行う所がスコセッシらしい「生」と「死」のアンビバレンツを成している。生かすも殺すも神次第。
『タクシードライバー』の焼き直しというよりはむしろ『アフター・アワーズ』に近い都市の喧騒と異世界往来をテーマとしたブラック・コメディのように感じる。主演のケイジよりも相棒のジョン・グッドマンの方が遥かにはっちゃけた演技で面白かった。
また名手ロバート・リチャードソンによる撮影が良いので、全編飽きずに楽しめるスピーディーなサスペンス風宗教映画。この監督にしては上映時間が短めで、タイトな出来栄えとなった。画によるギミックがやたらと多いのはご愛嬌。