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霊長類のBigsのレビュー・感想・評価

霊長類(1974年製作の映画)
4.5
特集上映 フレデリックワイズマンのすべて

これはまた度肝抜かれる映画だった。
まず個人的な話をすると、僕は動物の中で一番「猿」が好きで、動物園に行っても猿を一番見てしまう。これはなんでか考えると、見た目や動きがかなりヒトに近くて、そんな生き物が檻の中に入れられているのでなんとも言えない、いたたまれない感情になるのだろう。まあ見た目が似てるから思い入れるってのも多分に僕のエゴですが。

ということもあり、本作は非常にショッキングだった。
無慈悲で残酷なのは間違いないのだけれど、僕らの生活もこのような実験の上に成り立っているわけで。その恩恵を十分に受けてしまっている。でも、正直なところ迷うけど、やはりこの映画を見ると肯定はできない。

本作は、ワイズマン映画の語り口が特に効果的に活かされていたと思う。その語り口とは、(想田監督言うところの)観察映画的なところ。インタビューやナレーションは一切なく、このため各実験の"背景"や"目的"の説明も一切ない。この実験結果が一体何にどう反映されるのか全くわからない。権威ある研究施設だし、きっと立派な研究をしているのだけど、当の実験だけ抜き出して見せつけられると恐ろしく残酷な行為に見える。研究者たちもある種のマッドサイエンティストにも見えてくる。
動物実験はいつの時代もその倫理的是非が問われてきた。そのとき、是の意見としては、その実験によってもたらされる"ご利益"が大きな主張材料になると思う。例えば、この実験で◯◯という新薬が完成し、××という病気の人が救われます、とか。
でも一旦その目的を抜きにして、行為自体を見てみるとその恐ろしさ、残酷さが浮き彫りになってくる。そんなことが見えてくる映画だった。

それにしても映画で捉えられる実験がどぎつい。
頭を切開して脳に電極を埋め込まれた猿。頭に電子部品が付けられてる様も不憫だし、スイッチを入れて電流を流すと暴力的になったり発情したり、感情を操られる。
他の猿は高速回転するイスに座らされて、回転中の信号を取られたり。ジェット機に乗せられて、人間が浮き上がるようなGを掛けられたり。
パイプのような物で檻の中にいる猿の精液を絞りとったり。
まだ赤子で握力の無い猿を棒に掴まらせて何秒もつか計ったり。さすがに落ちた瞬間キャッチしてたが。
まあ一番インパクトが大きかったのは、生きた猿を胴体、内臓、頭、脳と解剖していくシーン。少し前まで生きていた姿を見ていたから、命を奪われてしまう瞬間は強烈に印象に残った。

それでも、職員たちは自分の子供のようにお猿さんたちに優しく触れてたのも印象的。決して人間的に冷酷なわけではない。それでも、このような行為もしているという、矛盾とも思える状況。大きな目的の前ではどんな人でも、残酷になってしまうということか。
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