けーはち

ロゼッタのけーはちのレビュー・感想・評価

ロゼッタ(1999年製作の映画)
3.7
経済格差とか社会問題への意識高め系『万引き家族』『パラサイト 半地下の家族』等に流れる現代のカンヌ路線を決めた99年パルムドール受賞作。ロゼッタは母親とキャンプ場のトレーラーハウス暮らしの少女。失職してぶち切れるオープニング~街からキャンプ場に帰る道をドキュメンタリー的に近接して追う画で、貧困描写が生活感に根ざして実存的で今見ても強烈。ひっきりなく車が走る幹線道路を横切って林に入るカットで1回「うわっ😱」となり、排水口に隠してある長靴に履き替え泥濘を渡っての家路を観てもう1回「うわっ😱」となる。腹痛になってもロクに医療もなくドライヤーで腹を温めるなど彼女の日常は常人の想像の埒外。沼で藻掻くシーンが2度あるが、この沼は毒親に引きずり込まれ、また手を差し伸べた他人をも引きずり込み容易に抜け出せぬ彼女の貧困そのものの象徴。それでも施しは受けず不正を糾弾して他人の職を奪う少女の必死さが痛々しい。淡々とした上手い筆致で、終始目を逸らせない圧巻の禍々しさがある。