シズヲ

ビッグ・リボウスキのシズヲのレビュー・感想・評価

ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)
3.5
大富豪と同姓同名だったボンクラ男が巻き込まれた滑稽な珍騒動。元々は興行面でも批評面でもあまり評価が高くなかったものの、ビデオ化などを皮切りにカルト的人気を獲得したという不思議な経歴を持っているのが面白い。作中で260回も“Fuck”という言葉が使われてたり、本作の主人公に因んでデュードイズムという思想が生まれてたり、色々と話題に事欠かないのも何だかおもろい。

飄々と日々を過ごしているヒッピー崩れのボンクラ中年デュード、もはや厄介者に近いベトナム帰還兵のウォルター、三人組の一人なのに不憫な扱いをされるドニー(よりによってブシェミで笑う)など、ヘンテコな登場人物達がやたら味わい深い。各々の思惑(?)や掛け違いが巡り巡って事態をややこしくしてしまう滑稽ぶりもシュール。というか思い込みの激しいウォルターが事態を尽くややこしくするのでフフってなる。「何でもベトナムに繋げるなよ!」的なデュードのツッコミが尤も過ぎて好き(元ヒッピーと帰還兵という組み合わせが奇妙で面白い)。露出狂の幼児性愛者やフェミニスト前衛芸術家、謎のニヒリスト集団など脇役陣も無駄に濃い。デュードが気絶した時に体験する奇怪な幻覚描写もやたらインパクトがある。

往年のアメリカ的カルチャーの延長線上にある登場人物が入り乱れる中、物語はバカバカしく悲喜劇的な様相で転がっていく。結局は勘違いや厄介払いから始まったしょうもない衝突、なのに妙なユーモアによって展開が成立していくので趣がある。主要人物達が変にマイペースなので何処か呑気なムードが漂っている。ボウリング場などといった身内のコミュニティ的なシーンが度々挟まれるおかげで、一連の騒動自体にも“地元で起きた一悶着”めいた謎のご近所感が生まれているのが微笑ましい。まあユーモアも含めて全体的にはそこまで乗り切れなかったけど、要所要所では何だかんだ笑ってしまったので悔しい。これくらい気ままで間抜けでも、一種のノワールは成立してしまうのだなあ。
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