Cineman

ビッグ・リボウスキのCinemanのレビュー・感想・評価

ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)
4.0
『ビッグ・リボウスキ』
ジョエル・コーエン監督
1998年公開アメリカ
鑑賞日:2023年2月8日

【Story】
1946年に発売されたサウンズ・オブ・パイオニアの名曲「タンブリング・タンブルウィード」にのせて草木もまばらな草原をゆっくりとカメラがなめる画面からこの映画は始まります。

(ナレーション)西海岸に住んでいたこういう男の話をしよう。

名前はジェフ・リボウスキ。

親は彼をそう名付けたが、

本人はその名を使わず“デュード”という名前で通していた。

“カッコいい男”という意味だ。

おれの故郷でそう名乗る奴はいない。

だがデュードはそういうヘンなやつだった。

住んでいる町もヘンだった。

だからおれにはその町が面白く思えたのだ。

ロサンゼルス“天使の町”だと?

“天使の町”とは恐れ入る。

だが確かにいい人間もいる。

(砂漠をなめていたカメラが人気の少ない自動車道に入りゆっくりと転がる草の玉を追いかける)

むろんおれはロンドンもフランスも知らない。

女王陛下をこの目で拝んだこともない。

だが、ロサンゼルスには行った。

だからこの話ができる。

(草の玉は海岸の砂浜をかぜに吹かれて転がり続けるけて海に向かう)

世の中どこへ行ってもたまげることは尽きない。

言葉遣いにしても。

その点はおれも人並みに満足して

あの世へ行ける。

さておれの話の発端は90年代の初め。

(明るくだだっ広いスーパーマーケットの中をヒッピーが物色している)

イラクのサダム・フセインとモメてた時だ。

なぜそれを持ち出すかと言うと

それぞれの時代には英雄がいる。

いやこの男デュードは決して英雄じゃない。

(ヒッピーのデュードが冷蔵ケースから牛乳パックを取り出してながめている)

その時と場所にピッタリはまる奴が存在する。

ロスのデュードはまさにそれだった。

だらしない無精者。

彼は無精者だった

ロスでも彼以上の無精者はいない。

ってことは世界でも一、二を争う無精者。

(パックの牛乳を冷蔵ケースから取り出して蓋を開けてニオイを嗅いでいるデュード)

だがそういう男でも

そういう男であっても

(デュードの行動をチェックしているキャッシャーの女店員)

何を言いたかったのか忘れた

奴の紹介はもう十分だろう。

(キャッシャーでクレジットカードの伝票に69セントと書き込みサインするデュード。店内のテレビに目をやると「クェートへの侵略は我々は許さない」とブッシュ統領が語っている)

いそいそと牛乳パックを腕にかかえて自宅に入るデュード。
玄関に入ったとたん暴漢が襲いかかりデュードは便器の中に顔を押し込められる。

(ここまで2分45秒経過。シングル盤が一枚かかりました)

デュードを痛めつけた暴漢の一人が玄関マットに小便をかける。
いきり立っていた二人の暴漢はデュードが同性同名の人違いだということに気付いてその場を去ります。
デュードは同性同名の大金持ちに絨毯を弁償してくれとクレームを言いに行きます。


ここから波乱万丈な物語が始まります。

とは言え物語はど〜でもいいんです。
レイモンド・チャンドラーの探偵小説世界を湾岸戦争真っ最中の1991年に設定したと言われている本作品はオフ・ビート感、脱力感あふれるナンセンスな会話のやりとりを全編笑うための作品です。

【Trivia & Topics】
*ステイーブン・ブシュミ
この物語の主人公は3人の仲間です。
草が大好きなヒッピー、デュード(ジェフ・ブリッジス)と、
「ええ~い、控えぃ控えおろう! この紋所が目に入らぬか!」とばかりに「ベトナムでは仲間が糞まみれで死んでいったんだ」というセリフが切り札のウォルター(ジョン・グッドマン)、
そしていつも会話に入るタイミングが悪いためにウォルターに「お前は黙っていろ」と制されるドニー(スティーブン・ブシュミ)。
3人はボーリング・チームで4年前の大会では優勝しています。

デュードはその時(1987年)のカセット・テープをうっとり聞くこともあります。

*カットがわりに流れる音楽の趣味の良さ。
この映画の魅力の一つは音楽です。
ボブ・ディランの「ザ・マン・イン・ミー」、エルビス・コステロの「忘れじの面影」、クリーデンス・クリアウォーターの「雨を見たかい」、サンタナの「僕のリズムを聞いとくれ」など多くの名曲がカット代わりに流れるセンスが抜群です。
何といっても圧巻はデュードたちのボウリングのライバルのジーザスが登場すすシーンで流れるジプシー・キングスの「ホテル・カリフォルニア」、このシーンには大笑いするしかないですね。

*カルト映画
この作品は90年代を代表するカルト映画です。
ブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』、ジム・シャーマン監督の『ロッキー・ホラー・ショー』、大林宣彦の『ハウス』などがぼくの好きなカルト映画です。

*タイトルの由来
『ビッグ・リボウスキ』という題名はレイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り(The Big Sreep)』からとられています。

*ホワイト・ルシアン。
デュードがどこに行っても飲んでいるカクテル「ホワイト・ルシアン」はウォッカとコーヒー・リキュールと生クリームで作るカクテルです。

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品
Cineman

Cineman