ぺろ

秋立ちぬのぺろのレビュー・感想・評価

秋立ちぬ(1960年製作の映画)
4.0
神保町シアターにて。先日の「女が階段を上る時」が良かったので引き続き成瀬巳喜男。イメージでは大人の女性のお話が多い監督だけど、こちらは小学六年生男子が主人公。ちょっとびっくりするくらい良かった。

叔父一家を頼って信州から出てきた母子。母は住み込み奉公にいき、慣れない都会では他の子にいじめられるが、2年下のおしゃまな女の子に出会い……というヒデオくんが過ごす銀座での夏休みを描く。が、事態はあれよという間につらい展開へと。あまりにも容赦なく切ないラスト。一方で少年時代の出会いと別れの美しさは映画全編を貫いており、辛気臭い作品ではないバランス感が見事。カブトムシというアイテムでの引っ張り方もすごくいい。夏の映画であるからこそ「秋立ちぬ」というタイトルが胸に染みる。

大人には大人の事情があるが、子供にはそれはわからないし、それに振り回される義理もない。子供には事態を打開する力もない、というか自分が置かれた状況における大人の都合を完全には理解はしていないんですよね。そこがまたやるせない。どこかヴェールに包まれたような漠然としたどうしようもなさに途方にくれる、あの感じがめちゃくちゃにリアル。

先日見た「子供の眼」も同じように大人の都合に振り回される子供を描いた作品でしたが、意外とこの「子供の孤独」をテーマにした作品ってあるんですかね。

三角ベースのシーンに出てくる幼児二人組が可愛すぎる
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