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ザッツ・エンタテインメントのオリのレビュー・感想・評価

4.2
 本作は『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』など、ミュージカル映画を得意としたMGM社の作品を歴史的に振り返るオムニバス映画。往年のフレッド・アステアや、当時若手のライザ・ミネリなどが紹介役を務める。

《ミュージカルとはなんぞや?》

 この主題にフランク・シナトラが冒頭にあっさり言ってしまう。ミュージカルには思想がない、ナンセンス(無‐意味)なのだと。

 にもかかわらず、シナトラ自身が演じてきたように、ミュージカルはあの手この手を使って、たとえば舞台設定で、ロマンスで、セットで、俳優の組み合わせで、そして何より身体と音楽で、観客を楽しませようとする。

 フレッド・アステアやジーン・ケリーは、自分には重力がないかのように踊ってみせるし、自分の身体がどのように動くか、そしてどのように観客に見えるかをよく知っている。面白く、そしてセクシーで、ときにロマンチックに。

《感情を身体と声で表現し、観客を楽しませることに極振りする。これぞエンターテイメント…! これぞミュージカル…!》

 そうはいっても、なにせセットにお金がかかる、舞台が変わっただけで役者が一緒、ドラマ上の深みがない、という複合的なことでミュージカル映画は、70年頃を境に衰退していったように思えてならない。本作は1974年の作品。だから《かつてはこんな華やかだったのに》という懐古的な意味が強い。
 それから30年ほど経った2000年代ぐらいから、シカゴやレミゼ、グレイテスト・ショーマンやらの王道のミュージカル、ロケットマンやボヘミアン・ラプソディなどのミュージシャンの伝記的なミュージカルなど、古いけど新しいミュージカル映画が流行りだしているのは、フランクが言ったこととなにか相対的に関係しているのだろうかと思う。
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