イッソン

ザッツ・エンタテインメントのイッソンのレビュー・感想・評価

3.6
この映画は、既に伝説となった偉大な芸人たちの貴重な記録です。でも長い。自分にとってのお宝シーンをあげてみます。

何度も見てしまったのはフランク・シナトラが紹介する1940年の「踊るニューヨーク」のフレッド・アステアとエレノア・パウエル。この二人で踊るビギンザビギンがすごい。ここでの二人は火花を散らすようです。
アステアの相手役としてベストなのはジンジャー・ロジャースだと思う。カップルとしての見た目が一番しっくりくるし、ジンジャーのダンスもアステアに負けてない。それはそれとして、エレノア・パウエル。彼女はまたジンジャーとは違って、アステアと対決している感じに見える。そこが面白い。
このダンスはただ歩いてるような肩の力の抜けたステップから始まる。ただ歩いているだけでいい!ダンスになっている!とても自然で無理がない。あっという間にダンスはつむじ風のように展開していく。
アステアはいつも完璧で笑顔を絶やしませんが、このダンスでも変わりません。パウエルとのタップの掛け合いがまた楽しい。
クライマックスのターンに入る前に伴奏は消えてタップの音だけになる。ここは勝負かけてきた!という感じで迫力があります。アステアとパウエルの勝負の笑顔に、きっとここで拍手が沸く。そして鍋の中で弾ける豆のように二人は回転するのでした。笑ってしまうくらい早い動き。映画の初めの方なので見て確かめて欲しい。

エリザベス・テイラーが紹介する1943年の「万雷の拍手」のリナ・ホーンのハニーサックル・ローズも初めて見た時に新鮮だった。こんな歌手がいたんだと唖然。
そしてジーン・ケリー。「私を野球につれてって」1949年でフランク・シナトラとケリーが踊る時、ケリーは明らかにシナトラより顔を前にぐっと出していて、芸人根性がハンパじゃない感じ。もっともシナトラはケリーに比べて下半身が頼りなく、やはり歌手なのだと思わせる。
アステアと踊る時もケリーの踊りは体育会系で、そこが当時ウケたのだと思うし、漫画のようだ。
あとはジュディ・ガーランドとミッキー・ルーニーの若い頃の映像「初恋合戦」1938年や「青春一座」1939年がバカバカしくミュージカルで楽しい。
ただこの二人は大人になってからが大変だったようで、まだ若い姿が残酷なほど幼く見えてしまう。
そしてジェームス・スチュアートの紹介する「愚者の歓喜」1939年のクラーク・ゲイブルが歌い踊るプティン・オン・ザ・リッツがとても珍しい。何をやってもゲイブルは男前なのだ。

この映画は長いので、流して観て気になるところを繰り返して見る。誰これ?と思うシーンが必ずあると思う。