あんがすざろっく

白い嵐のあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

白い嵐(1996年製作の映画)
4.2
リドリー・スコットをレビューしようシリーズ。
今回は「白い嵐」です。
少年達を主人公にしていること、群像劇であるということも、リドリーにしては珍しい作品です。
1961年に実際にあった海洋事件を当事者が回想した小説が原作になっています。



海洋訓練学校に入学したチャック。
半年間かけて世界を航行するアルバトロス号に乗船する。
チャックを含めた訓練生10人を待っていたのは、幾多の海を生き抜いてきたシェリダン船長。
出航準備を通して、船長の方針や海上でのルールを叩き込まれた訓練生達を乗せ、アルバトロス号は大海原へと乗り出す。




群像劇ということもあって、個性豊かな若者達が、ぶつかり合い、助け合いながら、海の男として成長していきます。
そして少年達それぞれが、自らのトラウマに立ち向かい、それを乗り越えます。
決して逃げ出すことを許さなかったのは、船長の厳しさ。
しかし、それ以上に厳しいものがあることを、船長は教えてくれます。
どう抗っても、結局人間では太刀打ちできないもの。

本作のタイトルでもある白い嵐という現象は、事故当時解明されておらず、シェリダン船長でさえも予測できないアクシデントだったのだそうです。

エンディングに流れるスティングの
「valparaiso」が、切なく響きます。



1961年という時代は、アメリカとキューバが一触即発だった頃であり、アルバトロス号も不当な検閲を受けそうになりますが、身を呈して訓練生やクルーを守ったシェリダン船長の男っぷりが、震える程にカッコイイ。

そのシェリダン船長を演じたのは、ジェフ・ブリッジス。
正に海を生き抜いてきた男。
厳しくもありますが、揺るぎない信念とその経験値で、アルバトロス号や訓練生を、正しい方向へ導きます。

その船長の奥さんで船医でもあるアリスに、キャロライン・グッドオール。
まぁ素敵なんです😍
色気もあるし、船長譲りの肝の太さも持ち合わせています。

こういう作品は、その後の活躍が楽しみな若手俳優が沢山出演していますが、本作でいうと、ライアン・フィリップになるかな。

10人いる割には、スポットがあたるメンバーが偏っていた気もするけれど、ドラマは悪くなかったし、またリドリーには群像劇を撮ってもらいたい気もします。

「メンフィス・ベル」や「蝿の王」も見返したくなりますね。

僕が本作を劇場で観たのは20代前半でしたが、少年達が主人公であるにも関わらず、今回見返した時の方が遥かに胸に迫るものがありました。
リドリーの作品の中では、どちらかというと印象に残っていなかったのですが、あまりの嬉しさと驚きにスコアを上げざるを得ません。
初見の時はあまり感じなかったのだけど、大海のうねりの荒々しさが素晴らしく、さすがは御大、と改めて実感しました。



「本物の船乗りは星さえあれば航海できる」




1996年5月 有楽町丸の内ルーブルにて
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