フランソワ・オゾンの作品て怖いよなー。ホラーよりよほど恐ろしい。静かに、そして確かに聞こえる破綻の足音。性描写と共に同氏の特筆すべき作家性だと思う。
本作は、プロットが過去に向かって綴られている。一組の夫婦の「離婚」という結果が先に提示され、そこから二人の過去へと遡る。破綻寸前~出会いまでが局地的にピックアップされ、それがつまり「分かれ路」として描かれるわけだ。
で、何が怖いかって、当たり前だけど、当事者がそのときはその出来事が破滅の決定打になり得るとは思っていないところ。僕らは結果を先に知らされているから、「あー、コイツやっぱりこういうところダメだわ」なんて認識できるわけだけれども、当事者たちはどこ吹く風なのである。恐ろしい。意識の外で進行する病魔みたい。いや、人の恋愛なんて病魔そのものか。
自分が愛する人ぐらい信じたいけれども、そんな淡い希望すら潰えるほどの鉄槌を食らいました。