ろく

NAGASAKI・1945 〜アンゼラスの鐘〜のろくのレビュー・感想・評価

2.8
「火垂るの墓」や「この世界の片隅に」になれなかった戦争映画。

いや、結構刺さるんだよ。でもそれは「映画」が刺さるのではなく「原爆」が刺さるの。原爆と言う巨大な「事件」の前では僕らはかしこまらなくてはいけないんだ。

確かに原爆の悲惨さもしっかり伝えているし(特に原爆症で亡くなる悲惨。当日なら即死だがジワリジワリと「殺される」ことは恐怖でしかない。その恐怖をしっかりこの映画は伝えているかと思う)、変に話を改変していないのも好感が持てる。これは「学校の課外授業」で見せたらいい「映像」だと思う。

でもアニメとして優れているかと言うと微妙。「火垂る」や「この世界」にあってこの作品にない物は単純に「キャラクターの造形」と「アニメとしての純度」だろう。前者はとにかくキャラクターがいいんだ。そのままグッズで売ってもいいのではないかと錯覚させるくらいに。でもこの作品は主人公も男性医師出し、観た感じもはまらない。さらにアニメの純度としての書き込み(背景や描線など)も前二作には及ばない。結局学校の課外授業で見せるもの以上にはなってない。

ここらへん、ちょっと考えてみる。学研の歴史漫画なんかもそうだけど(あるいは多くの学習漫画)「何かを伝える/見せる」というお題目だけが幅を利かせ、肝心の「映画」や「漫画」になってないんだよ。明らかにそれは「受けない」絵であり、「感情を揺さぶらない」キャラクターだったりするのがほんとに残念(歴史漫画に関しては小学館の最近の奴は少し向上してきた。それでも漫画家が本気で歴史に挑んでいるかというと謎だ。ゆうきまさみの「新九郎奔る」や能代純一の「昭和天皇物語」のような作品にはかなわない)。今作もそうで、原爆を伝えることも大事だけどもっと「映画」として「アニメ」として見せて欲しいと言うのが正直なところ。その「本気」があるからこそみんな観るわけで(同じネタでも「子の世界の片隅に」は明らかなる本気があった)。

個人的にはもっと長崎の風景を書きこんでほしかった。もっと大浦天主堂が燃えるとこを見せてほしかった。それによってもっと「伝わった」はずなんだ。そこが弱いのは不満でした。いや実話だからと言う意見もあるだろうけど、それでも「実話」と言う設定に寄りかかってはいけないのではないかなぁ。

ただし長崎の事はちょっと思い出しました。一度だけしか行ってないけど長崎旅行で原爆の記念碑をみたときの思いも思い出したからそれはアゲです。
ろく

ろく