湯っ子

お引越しの湯っ子のレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.0
誰のお引越しなのかと思ったら、、

レンが立てこもりを企てるところは、両親に対して、自分の子供時代を奪わないでくれ、と必死で訴えているようだった。
そんなレンに対して、ガラス戸をかち破って、血だらけの手を伸ばしてきたお母さん。
ガラス戸のすきまから、レンが渡そうとしたのかしなかったのか、差し出した古いぬいぐるみを受け取れず、落としてしまったお父さん。

琵琶湖への旅行で出会ったおじいさんから言われた、「思い出は片手で足りるだけでいい」っていう言葉、どういう意味なのかな。レンにもわからないようだったし、私にもまだわからない。
おじいさんくらいの年齢にならないとわからないのかもしれない。なのに、すごく心に残った。

この映画は、夏祭りの様子を、とても美しく迫力ある映像で観せてくれる。
琵琶湖のお祭りから入り込んだ異空間で、レンは自分の子供時代との別れの儀式をしたんだろうか。
「おめでとうございます」という、さよなら。

この作品の田畑智子は本当にすばらしい。
黒々と光る瞳、凛とした立ち姿。小さなからだに、強さ、賢さ、生きる力がみなぎっている。
中井貴一は、高級官僚みたいな役ばっかりやってるイメージ(あとはミキプルーンとビルマの竪琴かな…我ながら古い)なので、髭面のダメ親父が彼だと途中までわからなかったが、とてもハマっていて良かった。さすが役者さんだ。
お母さん役は桜田淳子。女優業は今のところ、この映画以来していないらしい。彼女が女優をやっているのは初めて観たが、こんなにちゃんと演技できる人だったんだと驚いた。

エンドロールには、未來への夢と希望があふれていて、幸せな気分になる。
この映画は、相米監督から、子供たちとかつて子供だった大人たちへのエールなのかも。

ガンバレ みんな ガンバレ
月は流れて東へ西へ

余談ですが、紅白でモッくんが白い液体入りのコンドームをネックレスにして、半ケツ出して歌って騒ぎになったよね(ちなみにエイズ撲滅のメッセージらしい)。90年代ってやっぱり色々おかしい。
湯っ子

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