ちぇるごまる

お引越しのちぇるごまるのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.3
相米慎二監督作品。

舞台は、29年前の京都。
離婚や別居は現代ほど多くはなく、両親のそれを公にすることを好まなかった主人公の少女は、両親の離婚を前提とした突然の別居に動揺を隠しきれない。
なぜ、一緒に住めないの?
なぜ、仲良く出来ないの?
なぜ、結婚したの?
…なぜ、私を産んだの?
"大人の考えることは、私には理解出来ない“
どうにかして、以前のように3人で仲良く暮らしたいと願う彼女が企てた策とは…。

火祭りのシーンの撮影は素晴らしい。
大火を操り消火させる同世代の逞しい子どもたちを目前に、主人公は何かを悟ったように感じた。
終盤、「おめでとうございます」と幻想の中の自分に向かって何度も叫び抱擁する様子は、まるで両親が離れ離れになることで自己憐憫していた過去の自分を、両親の意向を認められるようになった自己が受け入れ、魂の成長を祝っているかのようで涙が止めどなく溢れた。
当時12才の田畑智子が自然な演技で主人公を好演。
時折り映像化される木々が風に揺れる映像や満月は、相米監督ならではの主人公の心情の表現だろうか。
少女の心の成長を繊細かつ丁寧に描いた秀作。
ちぇるごまる

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