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星を追う子どものmizukiのレビュー・感想・評価

星を追う子ども(2011年製作の映画)
4.4
"「喪失を抱えてもなお生きろ」という死者の声は、呪いであり祝福でもある"
そうです…そう思う。死者への「今も生きていてほしかった」という無茶な願望を引きずり続ける者からしたら呪いかもしれない。でも、喪失を抱えて生きる=死者のその人らしさを忘れないで生きる、そういうことじゃないかなあ…。死者は、「わたしのこと忘れないでね」って思っているかも。喪失感さえないのなら、生者の中で死者は本当に死んでしまっているのだと思う。悲しみに暮れず、喪失を抱えながら日々を楽しく生きることだってできるはずだよ(自戒)。誰にでも訪れる死を、受け入れるということはつまり、喪失を当たり前のものとして受け入れることだと思う。喪失を感じてくれることに、死者は祝福しているだろう。


世間は「毒親」と呼ぶこともある親との関係を、可哀想なものとして描かない。寂しい悲しい思いはしたけど、その後優しくしてくれた…ってDV彼氏?って思うかもだけど、その瞬間ってたぶんとても美しいものなんだよ。この映画みたいに。レッテルのせいで全部良くない・汚いことにしたくない、だって美しいのは事実なのだから。


展開ありえん速いな。本だったら行間、とにかく間が少ない!ショートフィルムの如く場面が切り替わっていく。お母さんの喫煙シーンとか、3秒くらいで終わっちゃうけどもっとたっぷりとってほしさある(笑)
こだわりのある場面とない場面のクオリティの差がすごかったり、キーになる情報を結構スラスラ説明してきたりで荒削り感はすごいけど、動機が美しいなと想像つくからいいなって思う。勿体ぶらないで情報を教えてくれるっていうのは、オープンかつ奥ゆかしい性格が故なんだろうなあ、とか。
「君の名は」「天気の子」そして何より「すずめの戸締り」…その全てが詰まっているような作品だなあ。荒削りな原点かもだけど、ここでやりたいことをやり尽くしてるのはわかる。後の作品が全てブラッシュアップされたものになってるのかもと、鳥肌が立った。
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