よつゆ

独裁者のよつゆのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
4.5
チャップリンの映画はすごく直接的だ。
笑いもすごくわかりやすい。
おかしな見た目のチャップリンがおかしな行動を取り、あからさまに変な事を言っている。
物語がわからなくても見ているだけでも面白い。
そして最後の演説も。
チャップリンはきっとあれを伝えたかったんだろう。
そしてそれを何よりも映画で伝えたかった。
誰もが見ることができる映画で。
普通の映画ではきっと駄目だろう。
演説なんて、映画の形をあまりにも台無しにしている。
何故なら、映画ならば物語で伝えるべきだから。
最後に全部言ってしまうんじゃ意味が無い。
でも本作では許されるべきだろう。
何故か。
誰もが知る独裁者を主題としているから。
彼は演説を得意とした。
そして彼と入れ替わりになってしまった床屋、チャップリンは当然演説を強いられる。
そこで全ての想いが吐露される。
これは人類がそう想うべき内容なのだろう。
だから本作は演説で締めくくられるべき理由がある。

ただ一つ思うのは、本作はどこか民主主義のプロパガンダ映画めいていた。
それは最後の演説シーンで明確に言葉に表され、そこで初めてそう気が付いた。
それは当時からしたら当たり前なのかもしれない。でも、本作の大切な点は戦争について批判的であるということ。
戦争で国家間の主義主張の食い違いを認めさせようとすることを善としなかったことが事実として伝わってきた。

純粋にコメディも面白かったし、メッセージ性も強くチャップリンの強い想いが込められていて、まさしく傑作だと思いました。
この映画が忘れられない世界に居続けたい。
よつゆ

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