工藤蘭丸

独裁者の工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
-
私が映画ファンになるのを決定づけたのは、高校1年の時の『ビバ!チャップリン』と題されたチャップリン作品の連続リバイバル公開でしたね。

それまでは、チャップリンの名前すら知らなかったと思うし、初めに『モダン・タイムス』や『街の灯』が公開された時もノーマークだったんだけど、観に行った人たちからは面白いという評判を聞いて、初めて観に行ったチャップリン映画が本作でした。

もちろんサイレント映画を観たのも初めてだったけど、こんなに面白い映画があったのかと思ったほどだったし、ヒトラーにかみついたという淀川さんの解説を読んで、すごいなあと思ったものでした。それからはすっかりチャップリンのファンになって、全作品を観に行ったものでした。

それで古い映画にも興味を持つようになって、名画座にもどんどん通うようになったし、テレビの洋画劇場も観るようになって、すっかり映画漬けの日々を送るようになったというわけです。

本作は、2010年にもう一度ビデオで見直してみたんだけど、その時に調べたことによると、ヒトラーにかみついたというのは、どうやら淀川さんの間違いだったようで、むしろこの作品を作った時、チャップリンはヒトラーに好意を持っていたらしいですね。これを作り始めたのは、まだ第二次世界大戦が始まる前で、まだヒトラーの悪事も明らかになっておらず、最後は独裁者とユダヤ人が仲直りして終わるというエンディングになるはずだったようです。

ところが途中で戦争が始まったので、急きょ最後の演説を付け加えたということ。でも、その時はまだホロコーストの実態などは明らかになっておらず、もしそれを知っていたらこんな映画は作らなかっただろうと、後にチャップリンは自伝の中で述べているようです。