emily

メトロで恋してのemilyのレビュー・感想・評価

メトロで恋して(2004年製作の映画)
3.0
売れない俳優アントワーヌは、ある日地下鉄で運命的な出会いを果たす。彼女はクララと言う自由でチャーミングなTGVのウェイトレスとして働く28歳の作家の卵。二人は一気に恋に落ちるがある日の結婚診断で彼女が不治の病に冒されてる事が発覚される。

エスプリ満載で、メトロで出会って小粋な文章のやり取りで初デートから、夜のセーヌ河での初キス。陽気なフレンチポップをミュージカル調にデュエットで歌う二人には、恋の始まりを予感させるわくわく感とロマンティックな空気感が心地よく流れる。
きらびやかな日々の中に、初めての喧嘩と仲直りを交え、二人が直面する大きすぎる問題の発覚へ向かう。それ以降は映像のトーンが一変し、アントワーヌの葛藤が静かに描かれる。雑踏が消え街でたたずむアントワーヌ。そうして彼に寄り添う父親の言葉ではなく、一冊の本を持たすあたりに、家族愛を感じる。彼がやっとの思いで取った決断、必要な時に傍にいてくれなかった彼に対して男女の恋愛観の違いがしっかりと描かれつつ、ラストは観客にゆだねる形で終わっていく。

パリの美しい街並み、電車から見える風景の色の変化。黄金色から緑に変わり、寄り添う良質なフレンチポップ。歌詞も心情に寄り添い、心に染みわたる。

大切な人が不治の病だとわかったら?
それが自分にも影響を及ぼす可能性があるのなら?

二人のカフェでのすれ違い会話には、両方のリアルが表現されており、さりげない会話ではあるが、考え深いシーンである。距離を置き自分をリセットしたとき、大事なものに気が付く。忘れようとしても忘れられない。消そうとしても常に彼女がそこに居る。すべてを手に入れることなんて不可能だ。理想的な物とはかけ離れた結果になってしまったとしても、運命だと思える相手とであることなんて人生に一度か二度あるかだ。そんな相手と出会えたならどんな困難があっても、その一瞬の幸せにしがみつきたいものだ。
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