デニロ

ありふれた愛に関する調査のデニロのレビュー・感想・評価

ありふれた愛に関する調査(1992年製作の映画)
3.5
1992年製作公開。原作関川夏央、脚本荒井晴彦、監督榎戸耕史。

奥田瑛二が苦手だった。デビュー当時から暑苦しくて敬遠したかった。公開時に観なかったのは多分それが理由だったのだと思う。あ、お金のない時期だったことが一番なのだけれど。今でも彼を観ると重苦しいなと感じてしまうのだが、今更ながら本作を観ると当時の彼の風体や表情は今のわたしの鑑賞には堪えられる。失礼ながら今の彼を今はあまり観たくないのだが。彼の監督した映画作品を観た影響もあるのかもしれない。息が詰まる。肩が凝る。

その奥田瑛二が探偵。運命の女にお天気お姉さんの池田晶子。探偵と持ちつ持たれつのやくざ組長津川雅彦。意味不明のモテ男に世良公則。そんなたいそうな話が語られるわけでもないけれど、やくざのちっぽけな抗争に巻き込まれたり、依頼者の人妻と褥を重ねたりする探偵たちの男と女のペーソス溢るる愛憎を描く。冒頭のくしゃみのシーンは、拳銃で的にかけられてもおかしくはなく今や笑えない。

ハード・ボイルドとは趣の異なる情緒たっぷりの展開で池田晶子や小林かおりとのシーンにノワール感を感じるがもはや映画作品をジャンルに分ける必要もなかろう。なんだか懐かしい風景がたくさん表れて興味深かったが、公開当時に観ていたら何と思ったろうか。

国立映画アーカイブ「逝ける映画人を偲んで 小林壽夫 2019-2020」にて
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