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人間の証明のkmiwのレビュー・感想・評価

人間の証明(1977年製作の映画)
2.5
母さん僕のあの帽子どうしたでせうね
ええ、夏碓氷から霧積へ行く道で渓谷へ落とした、あの麦わら帽子ですよ

という西条八十の詩がキーとなる角川商法黎明期の大作。

ある程度の年齢の方ならほぼわかるだろう、Mama,Do you remember~~♪
という爽やかさもありつつ物悲しいフレーズ。
当時メディアミックスで鼻息荒かった角川の力業が遺憾なく発揮されているこの作品。
とても良くできた感動作だった!という不確かな強い思い込みがあり、コロナの症状がおさまってきた、まだ少しダルさが残っていた時に改めて観てみたのである。既知の感動作は気力が落ちている時には最適だ。

結果、ちょっとがっかり。
悪くはない。しかしながら詰め込み過ぎて詰めが甘い。

そもそもなぜこんなにファッションショーのシーンを入れ込んだのか。
山本寛斎は好きでも嫌いでもないが、ショーが多すぎて「えぇぃ!鬱陶しい!!」と言いたくなった。
表面上の華やかさと裏の戦後から続く暗さ悲しみ(それが今回の殺人事件に繋がる)を交互に見せて際立たせたかったのかもだが。

森村誠一原作は読んでいない。おそらく映画で端折っている部分がきちんと表現されているのだろう。何せ長編推理小説だし。
役者は豪華。観ればわかる。あの人もあの人も、あらあの人も出ている。
戦後の描写は腹立だしいが、多分そうであったのだろう。敗戦国の扱いなんてこんなもんだ。
それぞれ登場人物の繋がりは偶然が過ぎる気はするが、まあ許せる範囲か。

おおざっぱな感じで母親から殺されてしまうジョニーがかわいそうだな。引き離された、優しかったママに会いたくてただ会いたくて遠いアメリカから日本に来たのにね。
犯人である母(岡田茉莉子演じるデザイナー八杉)が人間を証明する方法は、霧積から身を投げる以外にもあったんではないかな。

この原作では他にいくつかドラマも作られていて、私はフジテレビ2004年版好きです。
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