佐藤克巳

不壊の白珠の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

不壊の白珠(1929年製作の映画)
5.0
清水宏監督初期サイレント映画の水準の高さを思い知らせる菊池寛原作メロドラマの傑作で、セピア色や青色に彩色された映像の瑞々しさは秀逸。カット割がキレキレで、カフェの背景の影絵の巧妙さ、クローズアップされた人物の心理描写も迫真の見事さ。同僚会社員高田稔を愛すタイピスト兼専務秘書姉八雲恵美子が、フラッパー妹及川道子に恋の実を譲り苦悩するヒロインを演じ、慰めれた専務新井淳に傾きかける結婚話を他所に、不仲の高田と及川の寄りを戻す事も叶わず、遂に高田は外国へ旅立った。一方の裕福なプレイボーイ小林新一郎との浮気に走った及川は、高田との愛より自由な生活を選択した。八雲は港の埠頭で一人泣く。成程、メロドラマでありながらメロドラマを超えた、八雲、及川の固唾を呑む好演は特筆に値するだろう。
佐藤克巳

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