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乱のmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

(1985年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

“もともとは黒澤が「毛利家は『三矢の教え』で知られる毛利元就の3人の息子たちのおかげで栄えたが、もしもその誓いが守られなかったらどうなるか?」という問いに、3人の娘を持つリア王の悲劇に結びつけて着想したもの”とのこと。

秀虎が2人の息子から命を狙われる序盤の城攻めシーンがやはり見所で、これでもかこれでもかと兵が命を落とす場面には、ゲーム・オブ・スローンズの苛烈さを思い出した。

本作は”人間の愚かさ”をテーマとしているが、中でも次郎。兄を殺し、刃物を首筋に突きつけてくる強気な兄嫁・楓の方(原田美枝子)と出会ってすぐに懇ろになり、言いつけに従って正室の宮崎美子を追い出して、殺しの手まで放ってしまう。今日の視点で見ると楓の方を九尾の狐にまで喩えるのはいささか如何かとは思うものの、そうも言ってしまいたくなる部下の気持ちも分からんではない。

城を追われた秀虎が正気を失う中で、自ら追い出した三郎(=コーディリア)と邂逅。許しを得るも束の間、三郎があっけなく死んでしまうラストの場面では、本作のテーマがセリフをもって語られる。全体通してとても舞台的な映画だ。

「神や仏を罵るな。神や仏は泣いているのだ。いつの時代も繰り返すこの人間の悪行。殺しあわなければ生きていけぬこの人間の愚かさは神や仏も救う術はないのだ。これが人の世だ。人間は幸せよりも悲しみを、安らぎよりも苦しみを追い求めておるのだ」

次郎の忠臣、鉄(くろがね)を井川比佐志が演じていたが、黒澤は高倉健に演じてほしくて4回もお願いに行ったらしい。衣装はワダエミ。
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